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犬の健康診断(秋:10~12月)
犬の健康診断について
日常診察や夜間救急で働く中でよく飼い主様が「昨日まで元気でした。」と言いますが、病状が末期の状態で見つかり治療が間に合わない子達を沢山みてきました。ほとんどが自分の愛犬・愛猫の状態把握ができてない飼い主様です。そうなるまでに何かしらのサインはあったはずです。ご飯を食べるから元気という判断では駄目なんです。
いかにその体調不良のサインに早く気付いてあげれるか?
動物達は我慢強く言葉を発せません。状態が悪くなる頃にはかなり進行しているケースで見つかる事が多いです。
日々、飼い主さんが愛犬の全身をさわって異常がないかチェックすることは出来ますが、見えない場所で進行する病気や自覚症状の無い病気などもあるため、「健康診断」を定期的に行い、予防や早期発見に努めることが大切です。
⭐️予防できるものは予防する。(ワクチン、フィラリア、ノミ・マダニなど)
⭐️早期発見できれば完治できる病気もあり、完治できなくてもその先の予後を考えて幸せに生活をさせてあげる事が出来ます。また結果的に費用的にも抑えれます。
⭐️常に現状の身体の状態を把握し今後起こり得る事を把握しておくのは飼い主の義務とも言えます。「健康診断」が大事です。
大切な家族の一員である愛犬にはいつまでも元気で健康に過ごしてもらいたい。
シニアでは実際に腫瘍や関節炎、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、慢性腎臓病、僧帽弁閉鎖不全症等の多くの病気が見つかっています。
今回はワンちゃんの「健康診断」について以下の5点をお話ししていきます。
①犬に健康診断は必要?5つのメリット!
②健康診断の頻度の目安について
③健康診断で行う検査内容について
④健康診断の時期・費用について
⑤健康診断の事前準備について
犬に健康診断は必要?5つのメリット!
①不調の早期発見
②病気の早期治療と予防
③データの蓄積
④ペットの日常のケアについてのアドバイス
⑤安心のために
①不調の早期発見
健康診断は、ペットが抱えているかもしれない健康上の問題を早期に発見する最も効率的な方法の一つです。
ペットは痛みや不調を言葉で伝えることができないため、飼い主さんが日常生活で気づきにくい隠れた症状や問題点があります。
例えば、歯石の蓄積、皮膚のトラブル、目の異常、耳の感染症などがこれに該当します。
②病気の早期治療と予防
健康診断は病気を早期に発見し、早めに治療を開始する大切な手段です。
特に慢性的な病気や進行性の病気に対しては、早期発見がその後の治療や対処法に大きく影響します。
さらに、病気を未然に防ぐ予防措置も健康診断でアドバイスを受けられます。
③データの蓄積
健康診断で得られるデータは、ペットが健康な状態のときから蓄積されることが理想です。
このデータがあると、ペットが病気になった際にその変化を明確に捉え、より正確な診断と効率的な治療が可能となります。
④ペットの日常のケアについてのアドバイス
健康診断を受けることで、獣医師から日常のケアについても具体的なアドバイスが得られます。
例えば、食事の改善や運動量についての指導があれば、それを実践することでペットの健康維持がより効果的になります。
⑤安心のために
健康診断はペットだけでなく、飼い主さん自身の心の安定にも関係します。
ペットが健康であることを知ると、飼い主さんも日々のケアに自信を持てるようになります。
また、何か問題があれば早期に対処できるため、後々の不安を大きく減らすことができます。
健康診断の頻度の目安について
ワンちゃんの健康診断の頻度の目安は、年齢、ライフステージごとに異なります。
それぞれ大きく3つに分けて解説していきます。
①子犬(1歳未満)
②成犬(1歳~6歳)
③シニア犬(7歳以上)
*犬と人間の年齢換算表
出典:環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」
ライフステージごととしましたが、あくまでざっくりとした年齢の基準として捉えていただけたら幸いです。
①子犬(1歳未満)
生後6ヵ月になるまでは、必要なワクチン接種やノミダニ予防を全て完了するため月に1度程度が目安です。
生後6ヵ月頃からは、避妊・去勢手術に適した頃合いのため、そのための術前検査(血液検査・胸部レントゲン検査)で診察に訪れる飼い主さんが多いかと思います。この術前検査を「健康診断」とします。
その後は、目安としては1年おきに健康診断を受けるとよいでしょう。
②成犬(1歳~6歳)
ペースとしては年に1回、健康診断を受けるのが理想です。
ワンちゃんの通常の行動や変化を獣医師が知ることにより、ワンちゃんに何か変化があった際に獣医師が病気に早期に気付く可能性が高くなります。
③シニア犬(7歳以上)
少なくとも年2回(半年に1回)の健康診断を受けることをおすすめします。もし、健康上の問題がある時は、それに応じて頻繁に受ける必要があります。
*半年に1回の健康診断と言うと、多いと感じるご家族さまもいらっしゃるかもしれません。
ただ、犬は人間の約4〜7倍のスピードで年をとります。犬の7歳は人間でいえば、50歳近い年齢です。急速に進む加齢によって起こる外見からはわかりにくい変化を見つけるためには、半年に1回受診いただくことをお勧めしています。
健康診断で行う検査内容について
血液検査だけでは安心できません。
血液検査をもとに他の画像検査(超音波検査やレントゲン検査)などを組み合わせることで総合的な診断が出来ます。
血液検査と画像検査を一緒に実施することをお薦めいたします。
例)
・血液検査で腎臓数値が高いから腎臓が悪いだけで終わるのではなく、なぜ腎臓が悪くなっているか、どのくらい悪いのかを画像検査や尿検査、血圧検査で調べる必要があります。
・血液検査には異常が出てはないが画像検査では腹腔内や胸腔内に腫瘍や異常がある。
・問診
・触診・視診・聴診
・血液検査(オプション項目も)
・超音波検査
・レントゲン検査
・尿検査
・便検査
【問診】
獣医師が飼い主さんに、普段の様子などの聞き取りを行います。気になることがある場合は、事前にメモをしてから健康診断に臨むといいでしょう。
【触診】
身体全体を触りながら、体に異常がないかを調べます。リンパ節などに腫れはないか、異常なしこりはないか、関節は正常に動くかなどです。
【視診】
目視で、身体をチェックします。太ったり痩せたりしていないか、毛並みに異常はないかなどです。目・口・耳の中も、この段階で検査してくれますよ。
【聴診】
聴診器を胸や背中に当て、心臓の音・肺の音・気管から伝わる音などを聞きながら、異常がないかを検査します。
【血液検査】
血液を採取し、遠心分離機で血球成分と上澄みの部分に分離します。血球成分では赤血球や白血球の数などから貧血や感染の有無を確認します。上澄み成分では「血液生化学検査」という検査を行い肝臓や腎臓などの各臓器の数値を確認します。
*その他のオプションの検査項目
『SDMA』
早期に腎臓病を評価できるバイオマーカー。腎機能が40%以上障害されると高値になります。全年齢で検査を検討。
通常の血液検査項目(CRE:クレアチニン)に比べて平均で9ヶ月も早く腎臓病を早期発見でき、筋肉量の影響を受けません。
『T4』
甲状腺機能低下症の診断に必要な甲状腺ホルモンの値。7歳以上では検査を検討する。
【超音波検査】
体の表面に超音波を当て、返ってきた超音波で内臓の様子や動きをチェックします。
腹部→肝臓・胆嚢・脾臓・腎臓・副腎・膀胱・リンパ節・胃腸などの形態確認、腫瘍の有無など
心臓→内部構造(先天奇形・腫瘍)、心臓の収縮能、血液の逆流の有無・速度、心筋の厚さなど
血液検査に次ぐ重要な検査です。
<注意事項>
質の高い超音波検査のためには観察部位の毛刈りが必要になりますのでこちらから『毛刈りをしてもいいですか?』と確認させていただくくことがあります。
ワンちゃんには被毛があり検査機器(プローブ)との間に障害物(毛、空気)やスペースが出来てしまいます。毛を刈らずして検査をする場合、画像の解像度が減少し情報量の多い正確な画像を得られません。時とし病変の見落としや誤解釈に繋がりかねません。
毛刈りに対するご理解とご協力をお願い致します。
【レントゲン検査】
レントゲン検査は、骨や関節の異常を早期に発見できます。その他心臓、肺、胃、肝臓、腎臓などの各臓器の大きさや形、位置を確認します。腹水や胸水、消化管内のガス貯留の多さも見ることができます。誤飲してしまった異物や結石などが見つかることもあります。
【尿検査】
尿検査では、尿のpHやタンパク質、細菌感染などを調べる「尿検査」と、尿を遠心分離機にかけて沈殿物を調べる「尿沈渣検査」があります。尿を調べることで、泌尿器や腎臓に関する病気をはじめ、全身のさまざまな病気を見つけることができるのです。
【便検査】
便に含まれる粘液や寄生虫、血液の有無、細菌バランスや消化具合などを調べます。便は時間が経つと成分が変質してしまうので、病院にはなるべく新鮮な便を持参しましょう。
健康診断の時期・費用について
<時期>
当院ではワンちゃんの健康診断を3〜6月の春と10〜12月の秋に実施しております。
<費用>
秋の健康診断
<おすすめ>
・成犬(1〜6歳まで)
→お手軽コース、安心コース
・シニア犬(7歳以上)
→しっかりコース、とことんコース
大きく4つのコースを用意しておりますが、オプションの検査項目についてはカスタム追加可能です。
例)安心コース+心臓エコー、しっかりコース+T4
健康診断の時期は検査費用がいつもより安くなっております。
この時期にぜひ健康診断を受けてください。
健康診断の事前準備について
・獣医師に相談したいことはメモをしておく。問診事項の確認。
<問診事項>
・食欲の有無(食の好みの変化)
・飲水量の増加の有無(実際の飲水量)
・咳の有無(性質や回数、タイミング)
・排便の異常(状態や回数の変化)
・排尿の異常(色や回数の変化)
・嘔吐の有無(ある場合には色と回数、どのようなときに嘔吐するのか)
・睡眠時間の変化(寝起きする時間に変化はないか、睡眠環境に変化はないか)
・運動の変化(動きがゆっくりなのか、まったく動かないのか)
・最近ストレスはなかったか(精神的なものだけではなく、気候や環境の変化も含む)
・心拍数や呼吸数の変化(普段に比べ極端に速かったり遅かったりしないかどうか)
・体温(おなかや耳など皮膚の薄いところを触り、いつもより熱かったり冷たかったりしないかどうか)
・触って嫌がるところはないか(そもそも触られることが嫌なのか、場所によるのか)
・気になる症状については動画を撮っておく。(跛行や神経症状など)
・尿検査や便検査をする場合は、自宅で採尿・採便をして動物病院に持参してください(1〜3時間前のものが理想)ただし、採れない場合は病院で採りますのでご安心ください。1〜3時間前のものが理想です。
・血液検査をする場合、腹部超音波検査をする場合は、食事が検査に影響してしまうため、採血前の12時間は絶食が基本です。絶食できなくても検査は出来ますが質の高い検査をお望みであれば絶食をお勧め致します。
老化が始まる時期は必ず来る
老化とは、身体のさまざまな生理的機能が加齢に伴い減退し、元に戻らず進行していくこと。今までよりも被毛の雰囲気が変わる、動きが鈍くなってくる、痴呆症状など、ちょっとした違いが老化のサインかもしれません。
老化のサインへの「気づき」は、飼い主さんの観察力にかかっています。
いつもの状態をよく知っておくこと。つまり『健康診断』を受けることが大切なのです。
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