Home > 獣医師コラム一覧

獣医師コラム

愛猫の鼻水やくしゃみ、放置して大丈夫?|猫風邪の原因と治療法

倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。

岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。

 

愛猫が鼻水を垂らしたり、くしゃみをしたり、目が涙目になっていると、とても心配になりますよね。

実は、猫にも「風邪」があります。いわゆる「猫風邪」と呼ばれるこの症状は、猫の健康トラブルの中でもよく見られるものです。

 

猫風邪は、単なる一時的な不調だと思われがちですが、実際には放置すると重症化する可能性があります。また、症状が慢性化し、完全に治すのが難しい場合もあるため、早めの対応が大切です。

 

今回は、猫風邪の原因や症状、取るべき対策について解説します。

■目次
1.猫風邪について
2.主な症状と早期発見のポイント
3.治療方法
4.生活環境の見直しの重要性
5.予防対策
6.新しい猫を迎える際の注意点
7.まとめ

 

猫風邪について


猫風邪は、ウイルスや細菌が猫同士で接触することで感染する病気です。また、感染した猫がくしゃみをした際の飛沫や、飼い主様の衣服や手を介して間接的に感染することもあります。

 

猫風邪を引き起こす主なウイルスや細菌には、以下のものがあります。

 

猫カリシウイルスFCV): くしゃみや口内炎熱発を引き起こします。

 

猫ヘルペスウイルス(FHV): 目や鼻の分泌物が増え、ひどい場合には結膜炎や鼻炎を伴います。

猫伝染性鼻気管炎についてはこちらから

 

クラミジア(細菌):主に目や鼻に症状を引き起こし、目やにや鼻水が特徴です。

 

これらの病原体は非常に感染力が強く、感染した猫が一生キャリア(病原体を保有している状態)になることも少なくありません。

 

実は、多くの猫がこれらのウイルスや細菌を体内に持っているといわれています。ただし、健康な猫では免疫力がこれらを抑えているため、症状が出ないことがほとんどです。

しかし、ストレスや他の病気が原因で免疫力が低下すると、症状が現れることがあります。

 

猫風邪は特に慢性化しやすい病気の一つです。特に猫ヘルペスウイルスは、一度感染すると体内に潜伏し、免疫が低下したときに再発することがあります。

そのため、猫風邪の治療では「完治」を目指すというよりも、症状をコントロールすることが大切です。

 

主な症状と早期発見のポイント


猫風邪の症状は、初期段階では軽く見えることが多いですが、早期に気づいて適切に対応することで重症化を防ぐことができます

 

くしゃみ:頻繁なくしゃみは、猫風邪の初期症状の一つです。

鼻水:透明な鼻水が次第に黄色や緑に変わる場合、感染が進んでいる可能性があります。

涙や目やに:涙や目やにが増える場合、結膜炎を起こしている可能性があります。

発熱:体が熱っぽくなり、いつもより元気がなくなることがあります。

食欲不振:鼻詰まりや口内炎が原因で、食欲が減ることがあります。

:呼吸器に影響が及ぶと、咳が見られることもあります。

 

<早期発見のポイント>

愛猫にいつもと違う行動や体調の変化が見られたら、注意深く観察しましょう。特に以下の場合は早めに動物病院を受診してください。

 

くしゃみや鼻水が続く場合

目や鼻の分泌物が多く見られる場合

 

また、目や鼻の分泌物が多いときは、柔らかいガーゼや湿らせたコットンなどで清潔に拭き取ることが大切です。これにより、感染の悪化を防ぐ手助けができます。

 

猫風邪の症状が軽く見えても、「もう少し様子を見てから」と放置するのは危険です。早期に対応することで、愛猫の健康を守ることができます。不安な点があれば、すぐに獣医師に相談しましょう。

 

治療方法


猫風邪の治療は、主に症状を和らげ、体調を整えることを目的としています。完治を目指すというよりも、症状が悪化しないように管理していく形が一般的です。

 

・免疫増強剤の使用

猫の免疫力を高めるために、当院では免疫増強剤(インターフェロン製剤)を使用しています。これにより、愛猫がウイルスに対抗しやすくなります。

 

・点眼治療

目の症状が強い場合には、点眼薬を使用して炎症や不快感を和らげます

 

・抗生剤の投与

もし2次感染(細菌感染)が確認された場合は、抗生剤を使用して感染症を治療します。

 

・サポートケア

食欲が落ちている場合には、食べやすいフードやサプリメント、点滴などで栄養補給と水分補給をサポートします。

 

<再発を防ぐために>

猫風邪は一度症状が落ち着いても、再発する可能性があります。そのため、治療後も引き続き愛猫の状態を観察し、適切なケアを続けることが大切です。

 

生活環境の見直しの重要性


猫風邪を管理するうえで、生活環境の見直しは非常に重要です。環境を整えることで、症状の悪化を防ぎ、免疫力をサポートすることができます。

 

<ストレス要因の確認>

ストレスは猫の免疫力を低下させ、猫風邪の症状を悪化させる大きな原因になります。特に、新しい環境への引っ越し新しいペットの加入頻繁な来客といった状況が、愛猫にとってストレスの要因となることがあります。

 

こうした変化がある場合は、愛猫が安心して過ごせる時間やスペースを作り、できるだけ負担を軽減することが大切です。

 

<多頭飼いでの注意点>

猫風邪は猫同士の接触によって感染が広がりやすいため、症状が出ている猫は隔離することが大切です。また、食器やトイレなどの共用アイテムは、こまめに清潔に保つように心がけましょう。

 

<室内環境の整備>

猫風邪は、寒さや乾燥によって症状が悪化することがあります。そのため、部屋の温度と湿度を適切に保つことが大切です。

 

室温は20~25℃を目安にし、寒さを感じさせない環境を整えましょう。

湿度は50~60%を維持すると、鼻や喉の乾燥を防ぐことができます。

 

加湿器や暖かい寝床を準備して、愛猫が快適に過ごせるように工夫してみましょう。

 

<食事の管理>

栄養バランスの良い食事は、猫の免疫力を高めるための基本です。特に猫風邪の症状がある場合、体力を維持するためにも、しっかりと栄養を摂ることが重要です。

もし食欲が低下している場合は、嗜好性の高いフードやふやかした柔らかいフードを用意しましょう。

 

栄養管理についてはこちらから

 

<安心して過ごせる環境づくり>

静かで落ち着ける場所を用意し、愛猫が安心して休める環境を整えましょう。できるだけ騒音や人の出入りが少ない部屋を選び、柔らかい寝床やお気に入りの毛布を置いてあげると、よりリラックスできる空間になります。

 

予防対策


猫風邪の予防には、定期的なワクチン接種が最も効果的です。

室内飼いでも他の猫との接触がある場合には、感染リスクが高まるため接種が推奨されます。

 

猫風邪予防には、3種混合ワクチン以上の接種が一般的です。

この3種ワクチンは、猫カリシウイルス感染症、猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペスウイルス感染症)、猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)を予防する効果があります。

 

そして、猫風邪の早期発見には、定期的な健康診断が効果的です。診察時にワクチン接種のタイミングや愛猫の体調を確認し、適切なケアを行うことができます。

 

当院のワクチン接種のご案内はこちら

 

新しい猫を迎える際の注意点


新しい猫を迎える際には、事前の準備と適切な対応が大切です。

 

健康状態の確認

新しい猫を迎える前に、動物病院で健康チェックを行いましょう。

 

隔離期間の設定

既存の猫と接触させる前に、2週間程度の隔離期間を設けることが推奨されます。これにより、感染症の拡大を防ぐことができます。

 

愛猫の健康を守るためには、予防対策をしっかり行いながら、日頃のケアを怠らないことが重要です。不安な点があれば、いつでも動物病院にご相談ください。

 

まとめ


猫風邪は、多くの猫が持つウイルスが原因で発症し、一度感染すると再発することがあります。しかし、適切な治療と生活環境の改善を行うことで、症状を管理し、愛猫の健康を維持することが可能です。

 

愛猫の健康を守るために、不安なことや疑問があれば、いつでもお気軽に当院にご相談ください。飼い主様と愛猫が安心して過ごせるよう、全力でサポートいたします。

 

■関連する記事はこちらで解説しています

猫白血病ウイルス感染症(FelV)について|ワクチンで予防できる?

猫免疫不全ウイルス感染症について|猫エイズってなに?愛猫を守るための知識

 

岡山県倉敷市にある「倉敷動物愛護病院」
ペットと飼い主様にとって最善の診療を行うことを心がけております。
一般診療はこちらから