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犬や猫の血液検査で分かること |健康チェックの第一歩

倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。

岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。

 

愛犬・愛猫が元気に過ごしていると、「まだ若いし、大丈夫かな」と思ってしまうこともありますよね。

でも実は、犬や猫はちょっとした体調の変化を上手に隠してしまう動物です。だからこそ、元気なうちから定期的な健康チェックを受けることがとても大切になってきます。

 

その中でも血液検査は、健康診断や体調不良時の診察で最初に行われる、いわば検査の第一歩です。

体の中で今、どんなことが起きているのかを知るための、大切なきっかけになります。

 

とはいえ、血液検査だけですべてが分かるわけではありません。

レントゲンやエコーなどの画像検査、そして飼い主様からの問診と組み合わせてこそ、より正確な診断へとつながっていきます。

 

今回は、犬や猫の血液検査について、「どんなことが分かるの?」「どんなときに受けるべき?」といった基本的なポイントを解説します。

■目次
1.血液検査で分かる主なこと
2.負担が少ないからこそ、定期的に受けたい検査
3.健康なときこそ知っておきたい「愛犬や愛猫の基準値」
4.フィラリア検査と一緒に血液検査を
5.まとめ

 

血液検査で分かる主なこと


「元気がないけれど、どこが悪いのか分からない」「最近、食欲が落ちてきた気がする」

こうした漠然とした体調の変化に対して、血液検査は身体の内側で起きている異変を数値として把握できる、有効な検査のひとつです。

ここでは、血液検査によって分かる主な項目についてご紹介します。

 

炎症や感染のサイン

白血球の数値を確認することで、体内で炎症や感染が起きているかどうかを推測できます。

白血球が増加している場合は、細菌やウイルスへの反応が考えられ、逆に減少している場合は免疫機能の低下が疑われることもあります。

 

肝臓・腎臓の機能評価

ALTやASTといった肝酵素、BUNやクレアチニンなどの腎機能マーカーを調べることで、これらの臓器の状態を把握できます。

肝臓や腎臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、異常があっても自覚症状が出にくいため、定期的なモニタリングが非常に重要です。

 

腎臓病についてはこちらから

 

貧血や脱水の確認

赤血球数やヘモグロビン濃度を測定することで、貧血の有無を評価できます。

また、血液中の成分バランスを確認することで、脱水傾向があるかどうかも判断できます。

 

電解質バランス・ホルモンの状態

ナトリウムやカリウムなどの電解質、また甲状腺ホルモンや副腎ホルモンなどを測定することで、ホルモン異常や心臓・内分泌系への影響が分かることもあります。

 

犬の甲状腺機能低下症についてはこちらから

猫の甲状腺機能亢進症についてはこちらから

 

このように、血液検査は臓器や体のさまざまな機能を数値として確認できる、客観的な評価手段です。

犬と猫の血液検査でわかることを示す図。中央に犬と猫が並び、周囲に『炎症・感染』『心臓・ホルモン』『肝臓・腎臓』『貧血・脱水』といった項目がイラスト付きで表示されている。

 

負担が少ないからこそ、定期的に受けたい検査


「検査」と聞くと、少し身構えてしまう飼い主様もいらっしゃるかもしれません。

ですが、血液検査はごく少量の採血で行うことができ、基本的に麻酔も必要ありません。犬や猫への負担が少なく、検査結果も比較的早く分かるため、気軽に受けていただきやすい検査のひとつです。

 

血液検査を受ける頻度の目安としては、6歳くらいまでの犬や猫であれば年に1回、ワクチン接種や春の健康診断のタイミングに合わせて行うのがおすすめです。

7歳を過ぎたあたりからはシニア期に入り、病気のリスクも高まるため、年に2回を目安にしましょう。

特に腎臓病や肝疾患など加齢とともに増えてくる病気を早期に発見するためには、この頻度が適しているとされています。

 

健康なときこそ知っておきたい「愛犬や愛猫の基準値」


愛犬や愛猫が元気に過ごしていると、「今は特に症状もないし、検査の必要はなさそう」と感じる飼い主様もいらっしゃるかもしれません。

しかし実際には、何もないときこそ血液検査を受ける絶好のタイミングといえます。

 

というのも、血液検査で示される正常値には、個体差によるわずかな幅があるためです。

健康な時期に一度でも検査をしておくと、その犬や猫にとっての「基準値」が把握でき、以後の比較材料になります。

 

この基準があることで将来数値に変化があった際に、それが異常なのか、個性の範囲内なのかを判断しやすくなります。

病気のサインが明確に現れる前でも、予防的に小さな変化に気づけるという点で、元気なうちの血液検査は大きな意味を持ちます。

 

フィラリア検査と一緒に血液検査を


春になると、動物病院ではフィラリア予防のシーズンが始まります。

この時期に行うフィラリア検査は、毎年欠かせない大切なチェック項目ですが、実はこの採血のタイミングを利用して、血液検査による健康チェックも一緒に行うことができます

 

すでに採血をする機会があるため、改めて検査のためだけに来院する必要がなく、飼い主様や動物への負担も少なく済みます。

「せっかくの機会だから、体の状態も一緒に確認しておこう」という気持ちで取り入れていただければ、無理なく健康管理を続けていくことができるはずです。

 

忙しい日々の中でも、効率的に体調をチェックできる方法として、フィラリア検査のタイミングをぜひ活用してみてください。

 

フィラリア予防についてはこちらから

 

まとめ


血液検査は、愛犬や愛猫の体の中で起きているわずかな変化に気づくための、大切な健康管理の手段です。

痛みや麻酔の必要がなく、短時間で多くの情報を得ることができるため、元気なうちから取り入れることで“健康状態の見える化”が可能になります。

 

「何かあってから」ではなく、「何もない今だからこそ」検査を受けること。

その前向きな一歩が、これからの健やかな毎日を守ることにつながります。

 

毎年行うフィラリア検査のタイミングを活用すれば、無理なく健康チェックを取り入れることもできます。

ご不安なことや気になる点がありましたら、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

 

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