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犬と猫の膀胱炎について|寒い季節に増えるおしっこトラブル

倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。

岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。

 

膀胱炎は、膀胱に炎症が起こる犬や猫によく見られる病気です。

主な症状として、おしっこの回数が増えているけれど量が少ない、おしっこをするときに痛がる、つらそうにしているなどの様子が見られます。

また、寒い季節に特に発症しやすいため、これからの時期は特に注意が必要です。

 

今回は犬と猫の膀胱炎について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。

■目次
1.膀胱炎とは
2.症状
3.原因
4.診断方法
5.治療方法
6.予防法やご家庭での注意点
7.まとめ

 

膀胱炎とは


膀胱炎は、膀胱に炎症が起こる病気です。

犬では細菌感染によるものが多く、感染が進行すると腎臓や前立腺に広がり、腎盂腎炎や前立腺炎といった合併症のリスクがあります。

また、細菌感染によっておしっこがアルカリ性になることで、ストルバイトという尿路結石が発生し、おしっこが出にくくなることもあります。

一方、猫では原因がよくわからない特発性膀胱炎がほとんどです。

 

犬も猫も、おしっこが出なくなる、または出にくい状態が続くと腎臓に深刻なダメージを与え、急性腎不全に進行する可能性があります。

 

急性腎不全は早急に治療しないと命に関わる病気ですし、治療後も慢性腎不全になるリスクが一定の割合で存在します。もしおしっこが出ない、出にくいなどの症状が見られた場合は、できるだけ早めに受診することが重要です。

 

症状


犬や猫の膀胱炎では、以下のような症状が見られます。

 

おしっこをするときに痛がったり、鳴いたりする

おしっこの回数が増える

おしっこが出にくそう

1回のおしっこの量が少ない

おしっこに血が混ざる

おしっこの色が濃い

おしっこがくさい

 

また、尿路結石症を伴う場合、おしっこにキラキラした砂のようなものが混じることがあります。

おしっこが出ない状態が続くと急性腎不全を引き起こす危険があるため、おしっこをしていない様子が見られた場合は、早急に動物病院に連れて行きましょう。

 

原因


膀胱炎の原因として、犬では細菌性膀胱炎が多く、猫では原因不明の特発性膀胱炎が多く見られます。

 

細菌性膀胱炎は、免疫力が低下したタイミングで発症することが多く、尿路結石症や腫瘍、ストレス、ホルモンの病気、基礎疾患があると発症しやすくなります。また、避妊をしていないメスの犬では、偽妊娠の時期に感染への抵抗力が低下するため、感染のリスクが高まります。

 

犬でも猫でも、尿路結石症は膀胱炎の原因になります。

尿路結石症は、食事内容や飲水量の影響でおしっこの性状に変化が出た場合や、脱水などが原因で発生します。

犬ではメスに多く見られ、猫ではオスとメスで発生率はほぼ同じですが、結石によっておしっこが出なくなるのは、猫ではオスに多い傾向があります。

 

診断方法


膀胱炎が疑われる場合、身体検査に加えて、尿検査超音波検査を行います。

尿検査では、おしっこに細菌が感染していないか、酸性やアルカリ性に偏っていないか、おしっこの濃さなどを確認します。また、顕微鏡でおしっこを観察し、結石の有無やその種類を調べます。

 

尿検査についてはこちらで解説しています

 

超音波検査では、膀胱の壁が腫れていないか、腫瘍がないか、膀胱内に結石が存在していないかを確認します。尿路結石症が疑われる場合は、レントゲン検査で結石の大きさや数、尿道や腎臓に結石がないかを調べます。

また、腎臓へのダメージや基礎疾患の有無を確認するため、血液検査を行うこともあります。

 

治療方法


膀胱炎の治療には、抗菌薬や抗炎症薬を使った内科的な治療が行われます。特に、細菌が原因の膀胱炎の場合、抗菌薬を使って細菌をしっかり排除し、炎症を抑えることが大切です。

猫の場合、原因がはっきりしないことも多いため、ストレスを減らすための環境改善が役立つこともあります。

 

また、おしっこの状態は食事の影響を受けやすいので、再発を防ぐためにも治療後も療法食を続けることがよくあります。これによりおしっこのpHを安定させ、結石や感染のリスクを抑える効果が期待できます。

 

予防法やご家庭での注意点


<水分摂取を意識>

膀胱炎を予防するには、しっかりと水分を摂らせて、おしっこを我慢させないことが大切です。特に寒い季節は、飲む水の量が減りやすく、おしっこが濃くなりがちです。

そこで、水をいくつかの場所に置く、冷たくならないようにこまめに取り替える、犬や猫が好きなフレーバーを少し混ぜる、ウェットフードを与えるなどして、積極的に水が飲めるように工夫しましょう。

 

<トイレ環境を整える>

トイレの環境も重要です。トイレは清潔に保ち、定期的に掃除してあげましょう。落ち着いて排尿できるよう、トイレの設置場所にも気を配ってください。

猫を複数飼っている場合は、頭数プラス1個以上のトイレを用意するのが理想です。

 

<ストレスの管理>

ストレスが膀胱炎を引き起こす原因になることもあります。人間でも疲れやストレスが原因で膀胱炎になることがあるように、犬や猫もストレスを感じた後に膀胱炎を起こしやすくなります。

もしストレスの原因がはっきりしている場合は、それをできるだけ避け、リラックスできる環境を整えてあげましょう。

 

<免疫力の低下に注意>

病気によって免疫力が低下することで膀胱炎を発症することもあります。定期的な健康診断を受けて、早期に病気を発見し、対処してあげることが大切です。

 

<食事の管理>

おしっこの状態は食事にも影響されるため、適切な栄養管理も予防の重要なポイントです。中には、野菜を多く食べさせたいとお考えの飼い主様もいらっしゃいますが、野菜の摂取量が増えるとおしっこがアルカリ性に傾き、ストルバイト結晶ができやすくなることがあります。

また、ほうれん草やブロッコリーなどの緑色の野菜にはシュウ酸が多く含まれており、これが原因でシュウ酸カルシウム結晶ができやすくなるリスクもあります。

人間に良い食べ物が必ずしも動物に良いとは限りませんので、フード以外のものを与える場合は、事前に獣医師にご相談ください。

 

まとめ


膀胱炎は特に冬に多く見られる病気ですので、これからの季節は意識して水分をしっかり摂らせることが大切です。

おしっこをする回数が増えた場合や、トイレでの様子に何か異変を感じた場合は、早めに動物病院へご相談ください。

 

■膀胱炎に関連する記事はこちらで解説しています

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猫の尿道閉塞について|尿が出ない場合は要注意

 

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