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犬や猫の健康管理の基本ポイントについて|食事量・水分摂取・トイレの目安とは?

倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。

岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。

 

毎日目にする「ごはん」「お水」「トイレ」の様子。

実はこれらの行動は、犬や猫の健康状態を映し出す大切なサインでもあります。

 

特別な症状が見られなくても、「なんだかいつもと違うかも」という小さな違和感が、病気の早期発見につながることは決して珍しくありません。

 

今回は、犬や猫の健康管理に欠かせない「適正カロリー」「水分量」「排泄量」について、解説します。

■目次
1.犬や猫の「適正カロリー」はどう決める?|RER・DERの計算方法
2.一日に必要な水分量の目安|「飲んでいるつもり」では足りないことも
3.排尿・排便の回数と状態|日常の「当たり前」を見逃さない
4.まとめ|“普通”を知ることが、健康を守る第一歩

 

犬や猫の「適正カロリー」はどう決める?|RER・DERの計算方法


「パッケージに書いてある量をあげているのに、体重が増えてきた気がする」「うちの子はシニアだけど、まだ元気だから少し多めに食べさせても大丈夫?」

そんなふうに、食事量について悩まれている飼い主様はとても多くいらっしゃいます。

 

実は、フードのパッケージに記載されている給餌量は、あくまでも目安であり、実際には年齢・体質・生活スタイルによって、必要なカロリーは大きく変わります

そこで知っておきたいのが、以下の2つのカロリー指標です。

 

<RER(安静時エネルギー要求量)>

RERとは、動物が安静にしていても生命を維持するために必要な最低限のカロリーのことです。

計算式は以下の通りです。

 

体重が2㎏未満の場合

RER(kcal)= 70 × 体重(kg)^0.75

 

この計算は少し複雑に感じるかもしれませんが、電卓で次のように計算することができます。

1.まず、体重(kg)を3回かけてください(例:体重 × 体重 × 体重)。

2.次に、√(ルート)キーを2回押すと、体重の「0.75乗」の値が求められます。

3.最後に、その値に70をかけると、RER(kcal)が計算できます。

 

体重が2㎏~45㎏の場合

RER(kcal)= 30 × 体重(kg)+70

 

例えば体重が10kgの場合:30 × 10 + 70 = 370kcal

 

<DER(日常生活に必要なエネルギー要求量)>

実際の生活では、動いたり遊んだりといった活動があるため、必要なカロリーはRERより多くなります。

このDERは、RERに「活動係数」を掛けて求めます。

以下は、一般的な活動係数の目安です。

犬や猫の活動係数の目安表:避妊・去勢済みの成犬成猫は×1.6、未避妊・未去勢は×1.8〜2.0、成長期の子犬子猫は×2.0〜2.5、肥満傾向やシニア・減量中は×1.0〜1.2

避妊済みの成猫(体重5kg)の場合

RER:234kcal × 活動係数1.6 = DER:約374kcal/日

 

つまり、1日に必要なカロリーは約374kcalとなります。

 

フードのパッケージに「100gあたり350kcal」と記載されていた場合、1日に必要なフードの量は以下の式で求められます。

 

374kcal ÷ 350kcal × 100g ≒ 約107g/日

 

この場合、1日あたり約107gが目安となります。

 

このように、カロリー管理は「数字」で把握することが大切です。

体重の増減が気になったときは、まずRER・DERを計算して、今の食事量が合っているかどうかを見直してみましょう。

<不適切なカロリー管理による影響>

日々の食事量が合っていないと、次のような健康トラブルにつながることがあります。

 

肥満や痩せすぎ

心臓や関節への負担、免疫力の低下など慢性的な病気の原因になることもあります。

 

栄養のとりすぎ(過剰摂取)

皮膚がベタつく、フケが出る、体臭が強くなる、消化不良などが見られることもあります。

 

肥満についてはこちらで解説しています

 

一日に必要な水分量の目安|「飲んでいるつもり」では足りないことも


犬や猫にとって、水分補給は健康維持のために欠かせない大切な要素です。

目に見えて飲んでいるように見えても、実は水分が足りていないことも少なくありません。

 

1日に必要とされる水分量の目安は以下のとおりです。

犬の場合:体重1kgあたり約50〜70ml

猫の場合:体重1kgあたり約40〜50ml

 

例えば体重5kgの犬であれば、1日に250〜350mlの水分が必要だと考えられます。

 

一方で、飲みすぎにも注意が必要です。

以下のような量を超える飲水が見られた場合は、「多飲」とされ、何らかの病気が隠れている可能性もあります。

 

・犬の場合:体重1kgあたり1日に100ml以上飲む場合

・猫の場合:体重1kgあたり1日に80ml以上、または体重に関係なく250ml以上飲む場合

 

飲水量が極端に増えていると感じた場合には、動物病院に相談しましょう。

 

<水分不足を防ぐポイント>

ドライフード中心は、飲水量がとても重要

ドライフードには水分がほとんど含まれていないため、飲み水だけで水分を補う必要があります。

 

ウェットフードを取り入れると水分補給がしやすくなる

ウェットフードは水分を多く含んでおり、自然と摂取量を増やすことができます。

 

ドライ+ウェットの「ミックスフィーディング」もおすすめ

飲水量が少ない場合には、ドライフードとウェットフードを組み合わせて与える方法も効果的です。

食いつきが良くなるメリットもあります。

 

<水分不足がもたらすリスク>

水分が不足すると、次のようなトラブルを引き起こすおそれがあります

 

・脱水症状

・尿の濃縮による膀胱炎や尿石症

・腎臓への負担増加

 

特に猫は「水をあまり飲まない」動物と言われており、腎臓病や膀胱炎が多い理由の一つでもあります。意識して水分補給できる環境づくりが大切です。

 

腎臓病についてはこちらで解説しています

膀胱炎についてはこちらで解説しています

 

飲水量が少ない、尿の回数が減った、尿が濃い色をしているといった変化に気づいたら、早めに獣医師へご相談ください。

 

排尿・排便の回数と状態|日常の「当たり前」を見逃さない


犬や猫の排泄の頻度や状態は、健康状態を知るうえでとても大切な指標です。

いつも通りに見えていても日常の中に、小さな異変が隠れていることがあります。

 

<排泄の目安>

排尿回数の目安

・犬:1日 3〜5回程度

・猫:1日 2〜4回程度

 

排便回数の目安

・犬、猫ともに:1日 1〜2回が一般的

 

便秘についてはこちらで解説しています

 

<健康な排泄物の特徴>

・便:形があり、適度な硬さで、色やにおいがいつもと変わらないこと

尿:薄い黄色で、排尿の様子がスムーズであること

 

<こんな変化があれば要注意>

以下のようなサインが見られる場合は、体の不調が隠れている可能性があります。

 

・尿の色が濃い、赤い

・頻繁すぎる or まったく出ない

・便がゆるい、硬すぎる

・便が黒っぽい、血が混じっている

・排泄時に力んだり、痛がったりする様子がある

 

排泄の異常は、泌尿器のトラブルや腸炎、食物アレルギー、内臓の病気など、さまざまな体調不良の初期サインであることがあります。

 

下痢についてはこちらで解説しています

 

まとめ|“普通”を知ることが、健康を守る第一歩


犬や猫の健康管理は、特別な検査や治療だけがすべてではありません。

毎日の暮らしの中でくり返される「食べる」「飲む」「排泄する」といった行動こそ、いちばん身近な健康チェックの手段になります。

 

もし気になることや不安なことがありましたら、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

飼い主様と一緒に、愛犬・愛猫の健康をしっかりとサポートしてまいります。

 

 

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