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犬や猫のお薬の飲ませ方について|獣医師が教えるタイプ別の正しい投薬方法とコツ

倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。

岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。

動物病院から「お薬をあげてください」と言われても、いざ自宅でやってみると上手くいかない……。そんなご経験をされた飼い主様も多いのではないでしょうか。

薬を飲ませようとすると逃げてしまったり、嫌がってしまったりと、毎回の投薬が大変なストレスになってしまうこともあります。

 

しかし、正しい方法とちょっとしたコツを知っておくだけで、飼い主様にも愛犬・愛猫にも、より安全でスムーズにお薬を飲ませることができるようになります。

 

今回は、お薬のタイプ別の与え方や、失敗しにくくなる工夫について、わかりやすくまとめました。

ご自宅での治療を少しでも続けやすくするために、当院でもアドバイスやサポートを行っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

■目次
1.薬を飲まない、嫌がるのはなぜ?
2.薬のタイプごとの特徴と与え方の基本
3.投薬時の注意点と安全対策
4.こんなときどうする?よくあるお悩みQ&A
5.動物病院でサポートできること
6.まとめ|正しい投薬で、治療を続けやすく

 

薬を飲まない、嫌がるのはなぜ?


犬や猫がお薬を嫌がるのには、いくつかの理由があります。

 

・味やにおいが苦手

・見慣れないものに対する警戒心

・無理に口を開けられたことで恐怖心がついてしまった

・投薬のたびに強く押さえつけられた経験

 

特に猫は、環境の変化や体を拘束されることに強いストレスを感じやすいため、一度でも怖い思いをすると、その後の投薬がますます難しくなってしまうことがあります。

 

「薬=怖いもの・嫌なもの」と思わせないためにも、無理のない方法でやさしく声をかけながら、飼い主様が落ち着いて対応することがとても大切です。

 

薬のタイプごとの特徴と与え方の基本


犬や猫に使われる薬のタイプを紹介するイラスト。錠剤を飲ませる犬、液体薬を与えられる猫、点眼薬をさす犬の3種類の薬の投与方法を説明している。

愛犬・愛猫に合わせた投薬方法を知っておくことで、毎日のケアがぐっと楽になります。ここでは、薬のタイプ別に、基本的な与え方とコツをご紹介します。

 

<錠剤・カプセルタイプ>

錠剤やカプセルは、動物病院で処方されることが多い一般的な形状です。以下のような方法があります。

 

直接口に入れる方法

利き手に薬を持ち、反対の手で上あごをやさしく持ち上げます。舌の奥のほうに薬をそっと置き、すぐに口を閉じて喉を軽くさすってあげましょう。飲み込んだことを確認できたら、しっかりと褒めてあげてください。

 

※猫の場合は暴れやすいため、バスタオルや洗濯ネットで体を包んでから行うと安全です。

 

おやつやフードに包む方法

チーズやささみ、ちゅ〜るタイプのおやつなど、香りの強い食材に薬を包んで与える方法です。

最初に「薬なし」のおやつを与えて安心させてから、「薬入り」をあげると、気づかれにくくなることがあります。

 

投薬補助グッズを使う方法

・ピルポケット:中が空洞になっていて、薬を包むだけでおやつのように食べてくれるアイテムです。

 

投薬器(ピルガン):薬を喉の奥までスムーズに入れるための器具で、手で直接入れるのが難しい場合に役立ちます。

 

<液体タイプ>

液体のお薬は、主にシリンジ(注射器型のスポイト)を使って口から与えます。

 

シリンジでの与え方

利き手にシリンジを持ち、口の横(頬と歯の間)からゆっくり差し入れ、少しずつ薬を押し出します。焦らず、数回に分けて飲ませるのがポイントです。

 

嫌がる場合の工夫

ペット用ミルクやちゅ〜るに混ぜることで、味への抵抗を減らすことができます。

どうしても保定が難しい場合は、バスタオルで体を包んで落ち着かせる方法も有効です。

 

<外用薬・点眼薬・点耳薬>

皮膚や耳、目に使うお薬は、「タイミング・使い方・準備」が大切です。

 

点眼薬・点耳薬の使い方

安定した姿勢で座らせ、顔をやさしく固定します。

 

・点眼薬:下まぶたをそっと引いて、目にポトンと落とします。

 

点耳薬:耳の入り口に薬を垂らしたあと、やさしく耳の根元をマッサージしてなじませます。

 

失敗しないコツ

・冷たい薬液は驚かせてしまうため、室温に戻してから使いましょう。

・ティッシュやコットン、手袋などを事前に準備しておくとスムーズです。

・薬を見せないようにし、手早く済ませることも成功のポイントです。

 

保定のポイント

ご家族に協力してもらい、「保定役」と「投薬役」に分かれるとスムーズに進みます。バスタオルで体全体をやさしく包んであげると、足の動きが制限されて落ち着きやすくなります。

 

投薬時の注意点と安全対策


犬や猫に薬を与えるときは、怒鳴らず無理に押さえつけないようにし、落ち着いた声かけと優しい対応を心がけることを伝えるイラスト

大切な愛犬・愛猫に安全にお薬を与えるために、以下の点にご注意ください。

 

無理に押さえつけない、怒鳴らない

投薬の際に無理に押さえつけたり、大きな声で叱ったりしてしまうと恐怖心が強くなり、次回以降の投薬がますます難しくなってしまうことがあります。

落ち着いた声かけとやさしい対応を心がけてください。

 

人間の食材との相性に注意

お薬を食べ物に包む場合でも、犬や猫にとって有害な食材は絶対に使用しないようにしましょう。

特に、チョコレート・ネギ類・ぶどうなどは、少量でも中毒を起こす可能性があります。必ず安全な食材を選んでください。

 

飲み忘れた・吐き出したときの対応

薬を飲み忘れた場合や、吐き出してしまった場合には、気づいた時点で早めに動物病院にご連絡ください。

自己判断で薬を追加したり、量を調整したりすることは、体に負担をかけてしまう可能性があるため避けましょう。

 

こんなときどうする?よくあるお悩みQ&A


投薬中に「上手くいかない」「これって大丈夫?」と不安になることは珍しくありません。ここでは、よくあるご質問とその対応方法をご紹介します。

 

Q.どうしても嫌がって飲んでくれません

A.投薬補助グッズ(ピルポケットや投薬器など)を使ったり、薬の形状を変更したりすることで、飲みやすくなることがあります。

それでも難しい場合は無理に続けようとせず、一度動物病院にご相談ください。薬の種類や形状の変更、投薬方法のアドバイスなど、愛犬や愛猫に合った対応が可能です。

 

Q.薬をあげたら口から泡を吹く、または吐き出してしまいました

A.液体のお薬の苦味や不快感に対する反応として、泡を吹いたり吐き出すことがあります。無理に再投与せず、まずは状況を記録して動物病院に連絡してください。

 

Q.錠剤が大きくて飲みにくそう、またはとても苦そうです

A. 錠剤の種類によっては、小さく割ったり粉末やシロップに変更できることがあります。ただし、中には割ってはいけない薬もありますので、自己判断は避け、事前に動物病院にご相談ください。

 

動物病院でサポートできること


投薬に不安がある場合は、当院で実際の投薬方法を目の前でご説明し、必要に応じて実演も行っています。

また、ご希望があれば、飼い主様と一緒に練習することもできますので、ご遠慮なくお申し付けください。

 

もし投薬が難しいようであれば、薬の種類や性格に応じて、粉薬や液体、チュアブルタイプなど、より与えやすい形状への変更をご提案することも可能です。

 

飼い主様と愛犬・愛猫にとって無理のない方法を一緒に考えながら、治療がスムーズに進むようしっかりサポートさせていただきます。

 

まとめ|正しい投薬で、治療を続けやすく


投薬は、病気の回復や体調管理に欠かせない大切なケアのひとつです。しかし、上手く飲んでくれなかったり、嫌がってしまうと、飼い主様にとっても大きな負担になることがあります。

 

大切なのは、無理なく続けられる方法を見つけることです。お薬のタイプや愛犬・愛猫の性格に合わせて工夫することで、投薬のハードルはぐっと下がります。

 

「上手くできない」「これでいいのかわからない」と感じたときは、遠慮なくご相談ください。ご自宅での治療がスムーズに続けられるよう、私たちが丁寧にサポートいたします。

 

 

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