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獣医師コラム
犬と猫の肥満細胞腫|気づきにくい初期症状と早期治療の重要性【獣医師解説】
倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。
岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。
愛犬や愛猫の体をなでているときに、いつもは感じない「しこり」に気づいたことはありませんか?
そのしこりが「肥満細胞腫」の場合、早く見つけて治療を始めることが、愛犬や愛猫の健康を守るためにとても大切です。
肥満細胞腫とは、犬や猫にできる腫瘍の一種です。この病気は進行の速さや症状が個体によって異なるため、日頃から愛犬や愛猫の体に触れて変化を見つけることがとても大切です。
今回は、犬や猫の肥満細胞腫とはどんな病気なのか、どのような症状が現れるのか、そして治療の流れについて解説します。
■目次
1.肥満細胞腫とは?
2.症状と発見のポイント
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
肥満細胞腫とは?
肥満細胞腫とは、皮膚や内臓にある「肥満細胞」が異常に増えて腫瘍を形成する病気です。
肥満細胞はアレルギー反応に関与する細胞で、通常は炎症や免疫の働きに役立っています。しかし、この肥満細胞が腫瘍化すると、ヒスタミンや他の炎症性物質を過剰に分泌し、体にさまざまな影響を及ぼします。
特に犬では、肥満細胞腫は皮膚腫瘍の中でも最も多く見られるタイプの一つです。
一方、猫の場合は発生頻度は少ないものの、見つかった際には皮膚だけでなく内臓にも関わることがあり、注意が必要です。
症状と発見のポイント
肥満細胞腫の症状は、腫瘍の大きさやできた場所、進行具合によって異なります。ここでは犬と猫の症状、そして飼い主様が気をつけるべきポイントを詳しくご紹介します。
<犬の場合>
犬の場合、肥満細胞腫は主に皮膚や皮下にしこりとして現れるのが一般的です。この腫瘍がヒスタミンを放出すると、しこりの周辺の皮膚が赤くなったり腫れたりすることがあります。
また、腫瘍の位置によっては、食欲が落ち、嘔吐や下痢といった症状が見られる場合もあります。
<猫の場合>
犬に比べて内臓、特に脾臓や消化器に発生するケースが多いのが特徴です。
このため、初期の段階では気づきにくいことがありますが、進行すると食欲が落ち、元気がなくなるといった全身的な症状が現れることがあります。
<飼い主様が気づきやすいサイン>
肥満細胞腫の初期には無症状であることが多いですが、以下のような変化に気づいた場合は注意が必要です。
・皮膚や皮下に触れるしこりが数日で急に大きくなった
・しこりの周囲の皮膚が赤くなったり腫れたりしている
・しこりが柔らかい、または固く、触ると痛がる様子がある
・嘔吐や下痢が続いている
・以前よりも元気がなくなり、動きたがらない
日頃から愛犬や愛猫の体に触れてボディチェックを行うことが、肥満細胞腫を早期に発見する鍵となります。しこりを見つけた際は、必ず動物病院で検査を受けるようにしましょう。
特に、しこりが固くなったり、急に大きくなったり、赤く腫れるなどの変化が見られた場合は早急に診察を受けることが大切です。
診断方法
肥満細胞腫の診断は、いくつかの段階を経て慎重に行われます。愛犬や愛猫の体にしこりや腫瘍を見つけた場合、できるだけ早く診察を受け、適切な検査を行うことが大切です。
<視診と触診>
最初に行われるのは視診と触診です。しこりの大きさ、形状、硬さ、皮膚の状態、そして周囲に炎症があるかどうかを確認します。
この段階で、肥満細胞腫の可能性があるかどうかを判断します。
<細胞診>
次に、細い針を使って腫瘍の中から細胞を採取し、顕微鏡で観察する「細胞診」を行います。
この検査は短時間で結果が得られるため、肥満細胞腫の診断において最も一般的な方法です。
肥満細胞腫は特有の細胞形態を持っているため、細胞診でかなりの確率で診断が可能です。
<病理組織検査>
細胞診では確定診断が難しい場合や、腫瘍の進行度を詳しく調べる必要がある場合は、腫瘍の一部または全体を外科的に採取して「病理組織検査」を行います。
この検査では、腫瘍の悪性度(グレード)や、周囲の組織への浸潤具合が詳細にわかります。
<画像診断>
肥満細胞腫が体内で転移している可能性を調べるために、レントゲン検査や超音波検査が行われます。特に、リンパ節や内臓への転移が疑われる場合に有効です。
<血液検査>
腫瘍が全身に及ぼしている影響や、他の臓器の機能を調べるために血液検査を行います。特に、肝臓や腎臓の機能、体内の炎症の程度を確認するのに役立ちます。
また、血液を特殊な染色液で染めて、腫瘍細胞が末梢血中に存在していないかを調べることもあります。
治療方法
肥満細胞腫の治療は、腫瘍の進行度や位置、愛犬や愛猫の全身状態に応じて最適な方法が選ばれます。
<外科手術>
外科手術は、肥満細胞腫治療の中で最も一般的かつ効果的な方法です。腫瘍を完全に切除することを目標に、周囲の正常な組織も含めて広範囲に切除します。
腫瘍が皮膚表面に限定されている場合は、術後の経過が良好なことが多いです。
ただし、腫瘍が切除しにくい位置(関節付近や内臓)にある場合は、手術が難しいこともあります。
<放射線治療>
腫瘍を完全に切除することが難しい場合や、再発のリスクが高い場合には放射線治療が行われます。この治療法は腫瘍を縮小させ、進行を抑える効果があります。
手術後の再発予防として使用されることもあり、化学療法と組み合わせて治療を進めるケースもあります。
<化学療法>
肥満細胞腫が進行している場合や、転移が見られる場合に選択される治療法です。
抗がん剤を使用することで、腫瘍細胞の増殖を抑え、病気の進行を遅らせる効果が期待されます。ただし、化学療法には嘔吐や下痢、食欲不振などの副作用が出ることもあるため、体調を見ながら慎重に進めます。
また、肥満細胞腫の原因となる特定の遺伝子変異が確認された場合、「分子標的薬」と呼ばれる治療薬を用いることがあります。この薬は、腫瘍細胞に特化して作用するため、従来の抗がん剤よりも効果的で副作用が少ない場合があります。
<内科的管理>
肥満細胞腫が放出するヒスタミンによる炎症やアレルギー反応を抑えるために、内科的な管理が行われることもあります。
抗ヒスタミン薬やステロイド剤を使用して、症状を緩和し、愛犬や愛猫の生活の質を保つことを目指します。
予防法やご家庭での注意点
肥満細胞腫は腫瘍性疾患であるため、確実に予防する方法はありません。
ただし、日頃から以下のポイントに気を配ることで、病気の早期発見や健康維持につなげることができます。
・日々のボディチェック
愛犬や愛猫の体をなでる習慣をつけ、皮膚や皮下にしこりや異常がないか定期的に確認しましょう。特に触ると違和感のあるしこりを見つけた場合は、早めに動物病院を受診することが大切です。
・健康診断の重要性
肥満細胞腫は初期の段階では無症状であることが多いため、定期的な健康診断が重要です。動物病院で定期検査を受けることで、潜在的なリスクを早期に発見することができます。
・適切な生活環境の提供
ストレスは免疫力の低下を招く可能性があります。安心できる快適で安全な生活環境を整え、愛犬や愛猫がリラックスして過ごせるようにしてあげましょう。
・食事と運動
栄養バランスの良い食事と適度な運動は、全身の健康を保つ基本です。健康的な体を維持することで、愛犬や愛猫の生活の質(QOL)を向上させることができます。
まとめ
肥満細胞腫は早期に発見し、適切な治療を行うことで予後が大きく改善する可能性があります。日々の観察と定期的な健康診断を欠かさず行うことが、愛犬や愛猫の健康を守る重要な鍵となります。
大切な家族である愛犬や愛猫の健康を守るため、少しの変化も見逃さないよう、日頃からしっかりと見守りましょう。
■腫瘍についてはこちらでも解説しています
・犬と猫の乳腺腫瘍について|避妊手術で発症リスクを減少できる
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