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犬のてんかんについて|愛犬が突然発作を起こしたら?

倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。

岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。

 

犬のてんかんは、繰り返し発作を起こす神経系の慢性的な疾患です。この病気は、発作が重症化すると命に関わることもあるため、適切な治療とご自宅でのケアが非常に重要です。

今回は、てんかんの原因や症状などの基本的な知識や、治療法や日常のケアなどについて解説します。

■目次
1.犬のてんかんとは?
2.原因
3.症状
4.てんかん発作時の対応方法
5.診断方法
6.治療方法
7.てんかんを持つ犬の日常ケア
8.予防法やご家庭での注意点
9.まとめ

 

犬のてんかんとは


てんかんとは、脳に異常な電気信号が発生し、繰り返し発作を引き起こす脳疾患を指します。犬において最も一般的な発作の原因と考えられています。

 

「てんかん」と「発作」という言葉は混同されがちですが、実際には異なる意味を持っています。

てんかんは脳の疾患名であり、発作とはけいれんや意識消失などの症状が起こっている状態を指します。

また、発作は脳疾患以外の原因によっても引き起こされることがありますが、てんかんによって引き起こされる発作は「てんかん発作」と呼ばれます。

 

さらに、てんかんは原因によって2つのタイプに分けられます。脳に外傷などの明らかな原因があるものを「症候性てんかん」、原因が特定されず遺伝的な素因が疑われるものを「特発性てんかん」と呼びます。

 

原因


症候性てんかんは、脳腫瘍、脳炎、頭部外傷などによる脳の物理的な変化が原因で発症します。これらの要因は、脳に直接的なダメージを与え、異常な電気信号を引き起こすことが特徴です。また、毒素や感染症が原因で脳に影響を及ぼすこともあります。

 

一方、特発性てんかんは、遺伝が主な原因とされています。遺伝的な素因により、脳の電気信号が正常に調整されず、発作が引き起こされると考えられています。

 

症状


てんかんにより発作が起こると、多くの場合、意識の消失や全身の筋肉のけいれん・硬直などが見られます。しかし、発作のタイプには個体差があり、意識の消失を伴わない発作や、一部の筋肉にのみ発作が見られる場合もあります。また、稀に全身の筋肉が脱力する発作も見られます。

発作によっては幻覚や幻聴が引き起こされることもあります。この場合、犬は空中を目で追うような仕草をしたり、口をカチカチ動かしたり、突然落ち着きをなくしてソワソワしだすなどの行動が見られます。

 

てんかん発作時の対応方法


愛犬が発作を起こしても慌てず、冷静に対応することが重要です。まずは愛犬の周りからぶつかりそうなものを取り除き、安全な環境を整えましょう。また、愛犬の様子を動画に残しておくと、後に動物病院を受診する際にとても役立ちます。

 

発作中は体のコントロールが効かず、無意識に噛んでしまうことがあるため、体にはなるべく触れないようにしましょう。特に、口を開けようとしたり、口の中に手を入れたりするのは非常に危険です。

 

通常、てんかん発作は2〜3分で自然に収まりますが、5分以上続く場合や、短時間に何度も発作が続く場合は、すぐに動物病院に連絡してください。

 

診断方法


まずは全身の健康状態を確認するために血液検査や画像診断が行われ、発作を引き起こす他の原因がないかを精査します。もし脳に異常があると疑われる場合、MRI脳波の検査が追加で行われることもあります。

検査の結果、特に異常が見つからずそれでも発作が繰り返される場合は、特発性てんかんと診断されます。

 

治療方法


発作の頻度を減らすために、抗てんかん薬を用いた薬物治療が主に行われます。抗てんかん薬の使用によって、多くの場合、発作の頻度を減少させ、年に数回程度に抑えることが可能です。

 

また、症候性てんかんの場合は、発作の原因に応じた治療が追加されることもあります。

 

てんかんを持つ犬の日常ケア


てんかんを発症した場合、基本的には生涯にわたって薬物治療が必要です。定期的に動物病院で検診を受け、必要に応じて薬剤の調整を行いましょう。

 

また、ストレスや特定のイベントが発作の引き金になることがあるため、なるべくストレスを最小限に抑え、発作のきっかけとなる出来事は避けるよう努めましょう。

 

予防法やご家庭での注意点


てんかんの多くは遺伝性によるものであるため、残念ながら予防する方法はありません。万が一てんかんを発症した場合は、獣医師の指示に従って適切な薬物治療を行うことが非常に重要です。

 

内服を忘れてしまうと症状が再燃することがあるため、薬の飲ませ忘れには十分注意しましょう。日常のルーチンに組み込むことで、飲み忘れを防ぐことができます。また、家族全員で協力して薬の管理を行うと安心です。

 

さらに、愛犬がリラックスできる環境を整え、ストレスを最小限に抑えることも大切です。適度な運動や遊びを取り入れながら、健康的な生活をサポートしましょう。

 

まとめ


初めての発作に遭遇すると、誰しも驚くものです。しかし、犬のてんかんは多くの場合、適切な治療を受けることで通常の生活を取り戻すことができます。

万が一発症しても慌てず落ち着いて、愛犬の様子を記録し、できるだけ早く動物病院へ相談しましょう。

 

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