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犬の肛門腺しぼり、どうしていますか?|しぼるべきタイミングと見逃せないサイン

倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。

岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。

 

愛犬の健康を守るために、毎日の食事やお散歩、ワクチン接種などに気を配っていらっしゃる飼い主様は多いかと思います。

けれども、意外と見落とされがちな「大切なケア」があることをご存じでしょうか? それが、“肛門腺しぼり”です。

 

肛門腺しぼりは、犬の健康管理においてとても重要なケアのひとつです。というのも、定期的に行うことで炎症や腫れ、肛門周辺の不快感など、思わぬトラブルを未然に防ぐことができるからです。

 

今回は、愛犬の健康を守るために欠かせない肛門腺しぼりについて、詳しくご紹介していきます。

■目次
1.肛門腺とは?溜まるとどうなる?
2.肛門腺が溜まっているかも?こんなサインに注意
3.肛門腺しぼりの目安
4.ご自宅で行う場合の方法と注意点
5.病院で肛門腺しぼりを行うメリット
6.まとめ

 

肛門腺とは?溜まるとどうなる?


肛門腺(こうもんせん)とは、犬の肛門の左右、ちょうど時計で言う4時と8時の位置にある小さな分泌腺のことです。

ここから出る分泌液には非常に強いにおいがあり、犬同士があいさつする際やマーキングのために使われているとも言われています。

犬の肛門腺の位置を示した図。肛門の左右、時計でいう4時と8時の位置に肛門腺があることをイラストと時計図でわかりやすく説明している。

通常、この分泌物は排便の際に一緒に排出される仕組みになっていますが、体のつくりや体質によって、うまく出せない犬も少なくありません。

分泌物が溜まり続けることで、肛門まわりに炎症を起こしたり、悪化すると腫れや破裂につながったりすることもあるため注意が必要です。

 

また、肛門腺が溜まりやすいかどうかには犬それぞれに違いがあります。

犬種や年齢、体型などが関係しており、特に小型犬や太りぎみの犬、高齢の犬では、肛門腺が自然に排出されにくい傾向があると言われています。

 

肛門腺が溜まっているかも?こんなサインに注意


以下のようなサインが見られたら、肛門腺が溜まっている可能性があります。

 

・お尻を床にこすりつけるような仕草をする(いわゆる“お尻歩き”)

・お尻を気にして、しきりに舐めたり振り向いたりする

・お尻が赤く腫れている、あるいは押すと痛がる

・酸っぱいような、強いにおいがする

 

そのまま放置してしまうと炎症が悪化し、まれに破裂してしまうこともあるため、できるだけ早めにケアしてあげることが大切です。

 

肛門腺しぼりの目安


肛門腺しぼりの一般的な目安は、1〜2か月に1回程度とされています。

ただし、これはあくまで目安であり、すべての犬に当てはまるわけではありません。

 

たとえば、肛門腺に分泌物が溜まりやすい犬の場合は、もう少し短い間隔でケアが必要になることもあります。

一方で、排便の際に自然と分泌物をうまく排出できている場合には、それほど頻繁にしぼる必要がないこともあります。

 

ご自宅で行う場合の方法と注意点


肛門腺しぼりは、慣れてくればご自宅でも行えるケアです。ただし、少しコツがいるため、初めて行う際は慎重に取り組みましょう。

 

まず準備として、汚れても大丈夫な服装に着替え、床にはトイレシートや新聞紙などを敷いておくと安心です。

肛門腺液は勢いよく飛び出すことがあり、非常に強いにおいがあるため、衣類や床に付くと落としにくくなります。また、衛生面と安全面を考えて、手袋とタオル、ティッシュを必ず用意しましょう。

 

しぼり方の基本は、肛門の外側から、やさしく挟むことです。

愛犬の尻尾を持ち上げ、肛門の左右、時計でいう4時と8時の方向に指を添え、ゆっくりとつまむようにして押し出します。

このとき、力の入れすぎや角度がずれていると愛犬が痛がったり、うまくしぼれなかったりすることがあるため、優しく丁寧に行うことが大切です。

 

また、慣れていないうちは、肛門腺液のにおいや飛び散りが想像以上に負担に感じることもあります。

「やってみたけれど出てこない」「においが強烈でつらい」「愛犬が動いてしまって怖い」など、不安がある場合は動物病院に相談しましょう。

犬の肛門腺しぼりの手順をイラストで解説した図。ステップ1では準備として汚れてもいい服やティッシュを用意。ステップ2では尻尾を持ち上げ、肛門の4時と8時の位置を確認。ステップ3では肛門の外側を優しく押し、分泌液を出す。ステップ4では分泌液が飛び出ることもあるため注意してティッシュで拭き取るよう説明している。

 

病院で肛門腺しぼりを行うメリット


肛門腺しぼりは、動物病院で行うことでより安全に、そして確実にケアすることができます。

肛門腺の構造を熟知した獣医師や動物看護師が丁寧に処置することで、痛みやトラブルのリスクを最小限に抑えることができます。

 

さらに、病院ではしぼるだけでなく、以下のような点も合わせて確認してもらえるのが大きなメリットです。

 

・肛門腺が腫れていないか

・炎症が起きていないか

・分泌物の色や状態に異常がないか

 

特に、小型犬やご自宅ではうまくしぼることが難しい犬、また、過去に処置の際に動いてしまった経験がある犬などは、病院でのケアが安心です。

 

実際に当院にも、「爪切りと肛門腺しぼりだけお願いしたくて」とお越しになる飼い主様が多くいらっしゃいます。

「診察というほどではないけれど、ちょっと頼りたい」そんな気軽な感覚でご来院いただければと思います。

 

爪切りについてはこちら

 

まとめ


肛門腺しぼりは、愛犬の健康管理において欠かせない大切なケアのひとつです。

特に、分泌物が溜まりやすい体質の犬や小型犬では、ケアの間隔があいてしまうと、肛門の腫れや炎症、さらに進行すると破裂につながることもあります。

 

ご自宅でケアすることも可能ですが、「やり方がよく分からない」「愛犬が嫌がってしまう」など、不安や心配がある場合には、無理をせず動物病院での処置をおすすめします。

病院であれば、安全にしぼることができるだけでなく、肛門腺の状態もしっかり確認してもらえるため、安心です。

 

肛門腺しぼりは、「つい忘れてしまいがち」なケアかもしれません。

ですが、お尻を床にこすりつける仕草や、においが気になるようになってきたときは、それが愛犬からの「そろそろチェックしてね」というサインかもしれません。

 

定期的な爪切りや健康チェックと合わせて肛門腺のケアも取り入れてあげることで、愛犬の快適な毎日をサポートできます。

愛犬が元気に過ごせるよう、気になることがあれば、いつでも当院までご相談ください。

 

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