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犬の分離不安とは?|分離不安の原因と正しいトレーニング方法

倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。

岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。

 

留守番中に愛犬が部屋を荒らしてしまったり、あちこちで粗相をしてしまったりすると、ついため息が出てしまいますよね。

普段からやんちゃな犬だと、「またいたずらかな」と思いがちですが、もし留守番中にだけこうした問題行動が見られる場合、それは分離不安が原因かもしれません。

 

分離不安とは、飼い主様と離れることに強い不安を感じる状態を指します。放置しておくと愛犬の心身の負担が大きくなり、問題行動も悪化する可能性があります。

 

今回は、犬の分離不安について、原因や症状、具体的な改善方法を分かりやすく解説します。

■目次
1.分離不安とは?その症状と特徴
2.なぜ分離不安になるの?
3.分離不安の予防と改善方法
4.留守番トレーニングは段階的に進めることが大切
5.動物病院に相談すべきケース
6.まとめ

 

分離不安とは?その症状と特徴

分離不安とは、飼い主様と離れることに強い不安を感じてしまう状態を指します。この不安が原因で、以下のような問題行動が見られることがあります。

 

出かける準備で落ち着かなくなる
飼い主様が出かける気配を察知すると、ソワソワしたり不安そうにしたりします。

 

・後追い行動
飼い主様のそばを離れず、家の中でもどこへ行くにもついて回ることがあります。

 

・問題行動
飼い主様と離れている間に、物を壊したり吠え続けたりします。また、粗相自分の手足を舐め続けるなどの自傷行為が見られることもあります。

 

犬の無駄吠えについてはこちらから

 

・脱走行動
ケージや部屋から逃げ出そうとする行動が見られる場合もあります。

 

<症状のレベル分け>

分離不安の症状は以下のように程度によって分類されます。

 

軽度:短時間の留守で落ち着かなくなる

中度:吠え続けたり物を壊したりする

重度:自傷行為や脱走行動が見られる

 

軽度の場合は分離不安が原因とは思わず、見過ごされてしまうケースも少なくありません。

しかし、普段は全く症状が見られないのに、飼い主様が不在のときや、愛犬が十分にかまってもらえないときに限ってこれらの症状が見られる場合、分離不安の可能性が高いといえます。

 

分離不安は、犬にとっても飼い主様にとっても大きなストレスになるため、早い段階での解決が望まれます

 

なぜ分離不安になるの?

分離不安は、飼い主様と愛犬が共依存の関係になっている場合に起こりやすいとされています。これは、飼い主様と愛犬が常に一緒にいることで、離れることに強い不安を感じてしまう状態です。

 

また、以下のような経験や環境の変化がきっかけで発症することもあります。

 

・過去のトラウマ

留守番中に怖い体験をしたり、虐待や遺棄を経験したりしたことがある場合、飼い主様と離れることに対して強い不安を感じることがあります。

 

生活環境の急な変化

急に留守番の時間が長くなったり、家族構成が変わったりすると、不安定な気持ちになり分離不安を引き起こすことがあります。

 

犬の性格や過去の経験が影響するため、同じ環境で飼われていても分離不安になる犬とならない犬がいます。

こうした背景を理解しながら、適切なケアを心がけることが大切です。

 

分離不安の予防と改善方法

留守番のトレーニングを行うことで、分離不安を予防したり改善したりすることができます。以下のステップを参考に、少しずつ慣らしていきましょう。

 

STEP1:短時間の別室トレーニング

まず、飼い主様が家にいる状態で、愛犬を別の部屋に連れていき、短時間だけ一匹で過ごす練習をします。このとき、愛犬が短時間でもおりこうに過ごせたら、ご褒美をあげてたくさん褒めてあげましょう。

慣れてきたら、徐々に一匹で過ごす時間を少しずつ長くしていきます。成功体験を重ねることで、自信を持てるようになります。

 

STEP2:短時間の留守番トレーニング

次に、実際のお留守番を想定して、飼い主様が家の外に出て短時間だけ一匹で過ごす練習をします。このステップでも、上手にできたらしっかり褒めるようにしましょう。

 

<留守番トレーニングのポイント>

不安を煽らない:愛犬が不安そうな行動をしても過剰に反応せず、落ち着いた態度で接しましょう。

 

失敗しても怒らない:失敗は学びの途中と考え、怒らずに次のチャンスを作りましょう。

 

留守番を「特別なもの」にしない:普段から外出しないのに外出の準備をする練習や、留守番前後はそっけない態度を取ることで、特別なイベントだと思わせないようにしましょう。

 

また、留守番中の不安を和らげるためには、気が紛れる工夫を取り入れることが大切です。例えば、新しいおもちゃを与えたり、音楽やテレビの音を流したりすることで、安心感を与えることができます。

さらに、愛犬がリラックスできるよう、お気に入りのベッドや毛布を置いて、快適で安全な空間を整えてあげましょう。

 

留守番トレーニングは段階的に進めることが大切

留守番トレーニングを進めるうえで、焦りは禁物です。愛犬がいきなり不安を感じなくなることはありません。そのため、まずは不安を感じる暇がないくらいの短時間からスタートし、問題がなければ少しずつ時間を延ばしていきましょう。

 

短時間の留守番トレーニングを繰り返すことで、愛犬は「飼い主様は外出しても必ず帰ってくる」と理解できるようになります。こうして成功体験を積み重ねることで、留守番中の不安を少しずつ和らげ、安心して過ごせるようになります。

 

愛犬のペースに合わせて無理のない範囲で取り組むようにしましょう。

 

動物病院に相談すべきケース

分離不安の症状が見られても、必ずしも病院を受診する必要があるわけではありません。ただし、以下のようなケースでは早めに獣医師に相談することをおすすめします。

 

自傷行為がある場合:手足を舐め続けて炎症を起こすなど、体に傷をつける行動が見られるとき。

 

トレーニングで改善しない場合:段階的なトレーニングを行っても不安が軽減されない場合。

 

ご近所トラブルの可能性がある場合:吠え続けるなどの行動が近隣に影響を及ぼす可能性があるとき。

 

こうした場合、獣医師が状況を詳しく診断し、必要に応じて薬を用いた治療を提案することもあります。特に、自傷行為や強い不安が見られる場合には、愛犬の心身の負担を軽減するためにも早めの受診を検討しましょう。

 

まとめ

分離不安は、愛犬にとっても飼い主様にとっても大きなストレスとなる可能性があります。そのため、日常生活の中で小さいうちから依存しすぎない程よい関係を築くことが大切です。

 

また、しつけの一環として留守番トレーニングを取り入れることで、愛犬が飼い主様と離れても安心して過ごせるようになります。早めの対策で、分離不安に陥りにくい環境を整えていきましょう。

 

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