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獣医師コラム

犬の歩き方がおかしい|足を引きずるときに考えられる病気と対処法

倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。

岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。

 

ある日突然、愛犬が片足を浮かせるように歩いていたり、歩き方がぎこちなくなったりしたことはありませんか?

犬が足を引きずっているときは、痛みや違和感があるサインであることが多く、原因によっては放っておくことで症状が悪化してしまう可能性もあります。

 

今回は、犬が足を引きずる主な原因と、ご家庭でできる初期対応や気をつけていただきたいポイントについて解説します。

■目次
1.犬が足を引きずる原因①|外傷・ケガによるケース
2.犬が足を引きずる原因②|関節炎・脱臼・ヘルニアなどの慢性疾患
3.受診すべきか迷ったときの判断ポイント
4.NGな対応とは?|判断ミスが悪化を招くことも
5.足を引きずるときの初期対応|家庭でできることと診察準備
6.まとめ|犬が足を引きずるときは「様子を見る」よりも早めの相談を

 

犬が足を引きずる原因①|外傷・ケガによるケース


急に足を引きずるようになった場合、まず考えられるのが「外傷」や「突発的なケガ」です。以下のような原因が挙げられます。

 

肉球のやけど(特に夏場の熱いアスファルトなど)

爪が折れてしまい、出血している

足裏にトゲやガラス片が刺さっている

ねんざ、打撲、骨折などの外傷

 

特に、お散歩の後や激しく遊んだ後に引きずるような歩き方をしている場合は、こうした外傷が原因となっている可能性があります。

足の異変だけでなく、触ろうとすると嫌がったり鳴いたりするなど、痛みを訴えるような様子が見られることも少なくありません。

 

犬が足を引きずる原因②|関節炎・脱臼・ヘルニアなどの慢性疾患


後ろ足に違和感がありそうに歩く犬のイラスト。足を引きずり、痛そうな表情をしている

数日から数週間にかけて、ゆっくりと歩き方が変わってきた場合には、関節や神経に関わる慢性的な疾患が原因として考えられます。代表的なものには、以下のような病気があります。

 

関節炎

特にシニア期に入った犬に多く見られる病気で、関節に炎症が起こり、痛みやこわばりが現れます。動きが鈍くなったり、散歩を嫌がるようになったりすることがあります。

 

関節トラブルについてはこちらで解説しています

 

膝蓋骨脱臼

小型犬に多く見られる、膝のお皿(膝蓋骨)が正常な位置から外れてしまう先天性の疾患です。

 

股関節形成不全

大型犬に多い骨格の異常で、股関節がうまくはまらず、関節に負担がかかって痛みや歩行の異常を引き起こします。遺伝的な要因も関係しているとされます。

 

椎間板ヘルニア

胴長短足の犬種(ダックスフント、コーギーなど)に多く見られます。背骨の間にある椎間板が飛び出し、神経を圧迫することで、足を引きずったり痛がったりする症状が現れます。進行すると麻痺が出ることもあるため、早めの対応が大切です。

 

これらの病気は少しずつ痛みが強くなっていくことがあり、さらに疲れや寒さなどの影響で症状が悪化することもあります。

また、最初は片足だけだったものが、徐々に両足へと広がってしまうことも少なくありません。

そのため、「年齢のせいかな」と見過ごしてしまうと痛みや運動制限が進み、愛犬の生活の質(QOL)を大きく損なう原因になってしまうこともあります。

 

受診すべきか迷ったときの判断ポイント


愛犬に足を引きずる様子が見られたときは、以下のような点に注意して観察してみてください。

 

・足をまったく地面につけようとしない

・足先や関節部分が腫れている、または熱を持っている

・抱き上げたり、足に触れたりすると強く嫌がる

・明らかに元気や食欲が落ちている

・トイレの際にしゃがめず、排泄がうまくできない

 

これらの症状がひとつでも見られる場合は、すでに強い痛みがある、または神経に関わる異常が進行している可能性があります。

 

NGな対応とは?|判断ミスが悪化を招くことも


犬の足に異変があるときにやってはいけない対応。人間用の鎮痛薬を与える、自己判断でマッサージをする、無理に散歩に連れ出す様子が描かれているイラスト

愛犬が足を引きずっている様子を見て、「少しでも楽にしてあげたい」と思うのは、飼い主様として自然な気持ちだと思います。

しかし中には、「良かれと思って行ったこと」が、かえって症状を悪化させてしまう場合もあるため注意が必要です。

 

例えば、自己判断で足をマッサージしたり、ストレッチをさせたりすることは避けましょう。

筋肉や関節に異常がある場合、無理に動かすことで炎症が広がったり、傷が深くなったりしてしまうことがあります。

 

また、人間用の鎮痛薬を与えることや、市販の動物用サプリメントを自己判断で与えることも危険です。

人と犬では体の仕組みが異なるため、同じ成分でも犬にとっては強い副作用が出るおそれがあります。

 

さらに、「歩かせればよくなるかも」と思って無理に散歩に連れ出したり、階段の上り下りやジャンプを伴う遊びを続けさせたりすることも控えてください。

一時的に症状が落ち着いているように見えても、根本的な原因が改善されていなければ、再発や悪化につながる可能性があります。

 

外見上は元気そうに見えていても、体の中では痛みや異常が続いていることもあります。

「しばらく様子を見れば大丈夫」といった判断が、結果として愛犬の症状を長引かせてしまうことのないよう、少しでも違和感があれば早めに動物病院を受診しましょう。

 

足を引きずるときの初期対応|家庭でできることと診察準備


異変に気づいたとき、すぐに動物病院を受診できない状況もあるかもしれません。

そのような場合には、まず落ち着いて、愛犬の状態が悪化しないように配慮することが大切です。

 

まず行っていただきたいのは、安静を保てる環境を整えることです。

生活スペースに段差があったり、滑りやすい床材が使われていたりする場合は、できるだけ動かずに済む静かな場所に移動させてあげましょう。

寝床にはクッション性のあるマットやタオルなどを敷いて、足への負担を和らげる工夫をしてあげると安心です。

 

また、痛みのある部位を無理に触る必要はありません

どちらの足に異常がありそうか、どのようなときに引きずるのかなどを、そっと観察する程度にとどめておくようにしましょう。

強い痛みがある場合、触れただけでも嫌がることがあるため、無理に確認しようとせず、落ち着いて見守ってあげてください。

 

もし可能であれば、歩き方の変化や足を浮かせる様子を動画に記録しておくと、診断に役立ちます

また、症状が出始めたタイミングや、直前の行動(散歩・遊び・ジャンプなど)を思い出せる範囲でメモに残しておくのもおすすめです。

些細な情報でも、獣医師の診察の手がかりになることがあります。

 

まとめ|犬が足を引きずるときは「様子を見る」よりも早めの相談を


愛犬が足を引きずっているとき、それは「どこかに違和感や痛みがある」という、はっきりとしたサインです。

見た目には大きな変化がないように思えても、体の中では何らかの異常が進行している可能性があります。

 

「まだ歩けているから大丈夫」「いつも通り元気そうだから」と判断して受診が遅れてしまうと治療が長引き、場合によっては重い後遺症を残してしまうこともあります。

 

少しでも気になる様子が見られたら、まずは動物病院にご相談ください。

早めに気づいてあげること、そして早めに行動することが、愛犬の健康とこれからの生活を守る大切な第一歩になります。

 

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