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犬と猫の糖尿病について|合併症を引き起こしやすい病気

倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。
岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。

 

糖尿病というと、私たち人間に特有の病気と思われがちですが、実は犬や猫でも発症することがあります。糖尿病にかかるとインスリン注射が必要になり、ご自宅で飼い主様が行う必要があります。
そのため、病気についての知識を深めることはもちろん、実際にどのように管理するかを学ぶことも重要です。

 

今回は犬と猫の糖尿病について、その概要と自宅での管理方法を詳しくご紹介します。

■目次
1.糖尿病とは?
2.原因
3.症状
4.診断方法
5.治療方法
6.予防法やご家庭での注意点
7.まとめ

 

糖尿病とは?


糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが十分に分泌されなかったり、インスリンがうまく作用しなかったりすることで、血糖値が高くなる病気です。このため、ブドウ糖が細胞に取り込まれず、尿中に排泄されるため「糖尿病」と呼ばれます。

 

犬と猫では糖尿病のタイプが異なります。犬では主にインスリンが生成されない1型糖尿病が多く見られますが、猫ではインスリンが生成されるものの、効果的に作用しない2型糖尿病が多く見られます。

 

原因


糖尿病の原因は犬と猫で異なります。
犬の場合、遺伝や年齢が大きく関係しています。特に中高齢(8歳以上)の犬やテリア系の犬種に多く見られます。
一方、猫では肥満や運動不足といった生活習慣が主な原因とされています。猫も中高齢(8歳以上)になるとリスクが高くなりますが、品種による差はあまりありません。

 

また、他の病気や状態が原因でインスリンが効きにくくなることで発生する糖尿病があります。これを続発性糖尿病といいます。
犬の場合、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)、膵炎、肥満、発情(高プロゲステロン血症)、ステロイド薬の使用が原因になることがあります。

 

犬のクッシング症候群についてはこちらで解説しています

 

猫の場合は、炎症性の病気、腫瘍、クッシング症候群、甲状腺機能亢進症先端肥大症などが原因となり得ます。
これらの状態がインスリンの働きを妨げ、血糖値が高くなるために続発性糖尿病が起こります。

 

症状


糖尿病の犬や猫には、多飲多尿(水をたくさん飲み尿をたくさん出す)、食欲が旺盛なのに体重が減少するなどの特徴的な症状があります。
進行すると「糖尿病性ケトアシドーシス」や「高浸透圧高血糖症候群」といった危険な状態に陥ることもあります。

 

糖尿病性ケトアシドーシス
インスリンが不足し、インスリンが不足すると、糖をエネルギーとして活用できないため、体はエネルギーを得るために脂肪を使用します。その結果、ケトンと呼ばれる酸性の物質が体内に大量に蓄積され、血液が酸性に傾くことで深刻な健康問題を引き起こします。

 

高浸透圧高血糖症候群
血糖値が極端に高くなり、体液のバランスが崩れることによって発生する状態です。糖尿病性ケトアシドーシスと異なり、ケトン体があまり生成されないため、血液の酸性化は起こりませんが、その代わりに深刻な脱水と電解質異常が生じます。

 

さらに、白内障や細菌感染症、脱水による腎臓病などの合併症を引き起こすことがあります。これらの症状に早めに気付き、適切な対策を講じることが大切です。

 

診断方法


糖尿病の診断は、多飲多尿や体重減少といった典型的な症状から疑われ、尿検査や血液検査によって確認されます。

 

血液検査では、血中の糖の濃度を測定します。通常、血糖値が高い状態が続くと糖尿病の可能性が高まります。
血糖値に加え、過去数週間の長期的な高血糖の有無を調べる項目を測定する場合もあります。

 

尿検査では、尿中に糖やケトン体が含まれているかどうかを調べます。健康な犬や猫の尿には糖は含まれませんが、糖尿病の場合は血糖値が高すぎて腎臓で再吸収されきれず、尿中に排出されます。
また、ケトン体は体が脂肪をエネルギー源として利用する際に生成される物質で、ケトン体が尿中に多く含まれている場合は糖尿病が進行している可能性があります。

 

これらの検査結果に基づいて糖尿病の診断が下され、治療方針が決定されます。

 

治療方法


糖尿病の治療にはインスリン注射が欠かせません。初期には血糖値が非常に高い状態や脱水状態の改善が優先されることが多く、そのためには入院治療が必要になることがあります。

 

インスリンの適切な投与量を決定するためには、センサーを用いて血糖値の変動をモニタリングします。これにより、一日の中での血糖値の変動を把握し、最適なインスリン投与量を決定します。
特に猫の場合、インスリン治療と食事療法を併用することで、インスリンの投与が必要がなくなることもあります

 

インスリン注射は飼い主様が自宅で行う必要がありますが、慣れるまでは不安かもしれません。当院の獣医師が注射方法を指導いたしますので、何か不明点があれば遠慮なくご相談ください飼い主様が安心して治療を行えるよう、しっかりとサポートさせていただきます。

 

予防法やご家庭での注意点


犬の場合、遺伝が糖尿病の発症に関与している場合もあり、完全な予防は難しいですが、適切な食事と体重管理でリスクを減らすことは可能です。

 

猫の場合は、肥満予防が重要です。食事量の管理や運動を促す環境作りが有効です。特にキャットタワーなどを設置して、運動量を増やす工夫をしましょう。

 

糖尿病は合併症を引き起こしやすい病気です。日頃から愛犬や愛猫の様子を観察し、体重の減少や過剰な水分摂取などの変化が見られた場合は、早めに動物病院を受診することをお勧めします。

 

まとめ


糖尿病はご自宅でのケアが非常に重要です。特にインスリン注射は長期間にわたるため、飼い主様自身が正しい方法を学ぶことが大切です。不安や疑問があれば、いつでも当院にご相談ください。

 

岡山県倉敷市にある「倉敷動物愛護病院」
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