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獣医師コラム
犬と猫のスケーリングについて|愛犬・愛猫の口臭は気になりませんか?
倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。
岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。
犬や猫の口臭は当たり前だと思っていませんか?実は、犬や猫の口臭は健康状態を映し出すバロメーターであり、特に口腔内のトラブルを示唆するサインとなることがあります。
口臭の根本的な原因としてよく挙げられるのが、歯石の蓄積です。歯石は家庭でのデンタルケアだけでは除去できないため、動物病院でのスケーリングの処置が必要となります。
今回は、スケーリングの重要性について解説していきます。
■目次
1.スケーリングとは?
2.スケーリングの重要性
3.デンタルケアをしないとどうなる?
4.スケーリングの流れ
5.麻酔のメリットとデメリット
6.まとめ
スケーリングとは?
スケーリングとは、歯や歯周組織の健康を維持するために行われる歯科処置の一つで、歯垢や歯石の除去を目的として行われます。歯石は、歯垢が硬化したもので、わずか3〜5日で形成されます。
スケーリングは大きな音や痛みを伴うことがあるため、犬や猫の安全を考慮して、全身麻酔下で行われます。
スケーリングの重要性
犬や猫の口内環境は、人間とは異なり、虫歯の発生は少ないものの、歯石が付着しやすく、歯周病になりやすい特性があります。歯周病はただ口臭が強くなるだけでなく、痛みにより食事がとりにくくなるなど、犬や猫の生活に大きな影響を及ぼします。
さらに進行すると歯が抜けてしまい、最悪の場合には顎が骨折してしまうこともあります。
これらのリスクを避け、犬や猫が健康で長生きできるようにするためには、歯周病が進行する前にスケーリングを行うことが非常に重要です。
デンタルケアをしないとどうなる?
歯石が蓄積された状態を放置しておくと、さまざまな健康上の問題が発生するリスクが高まります。
歯石は多数の細菌を含んでおり、これらが原因で下記のような炎症や感染症を引き起こすことがあります。
<口内炎>
細菌の増殖が口腔内の粘膜に炎症を引き起こし、痛みや食欲不振の原因となります。最も一般的な症状としては硬い食べ物を避けるようになり、柔らかい食べ物を好むようになることが挙げられます。この痛みが原因で最悪の場合、全く食べられなくなることもあります。
加えて、口内の痛みや不快感からよだれが増えるのも口内炎の典型的な症状の一つです。
<歯周病>
歯周病は犬と猫において最も一般的な病気の一つです。3歳以上の犬の約80%、猫では70%が患っているとも言われています。
これは歯垢が歯の表面や歯周ポケットに溜まることによって引き起こされ、重度になると歯が抜け落ちる原因ともなります。また、口臭の大きな原因の一つでもあります。
<根尖膿瘍>
根尖膿瘍は、歯周病が悪化すると歯の根元(根尖)の周囲に膿瘍ができる「根尖周囲膿瘍(歯根膿瘍)」になります。
歯石の中の細菌が血液を介して広がり、歯槽骨が溶け、膿瘍が形成されます。
進行すると頬が腫れ、膿瘍部分の頬の皮膚が破れて血や膿が出ることもあります。
<全身疾患への影響>
口腔内の細菌が血流に入り込むと、心臓病、腎臓病、肝臓病などの全身疾患のリスクが高まります。
スケーリングの流れ
スケーリングは全身麻酔をして行うため、処置の前には必ず術前検査を行います。
まず口腔検査を通じて、歯の表面だけでなく、歯肉や歯根膜の状態、歯周ポケットの深さなど、口内の健康状態を総合的に評価します。これにより、スケーリングの必要性や抜歯が必要かどうかを判断します。
そして、血液検査やX線検査、エコー検査などを行い、麻酔を安全に受けられる状態であることを確認したうえで、スケーリングを行います。
スケーリングでは、専用の器具を使って歯石を丁寧に取り除き、歯がグラグラしている場合は、同時に抜歯も行います。
処置後は、歯の表面を滑らかにするポリッシングを施し、今後の歯垢の付着を防ぐためのケアも行います。
麻酔のメリットとデメリット
当院では無麻酔でのスケーリングは推奨していません。
麻酔を使用せずに処置を行うと、犬や猫が怖がったり痛みを感じたりして暴れてしまうため、口腔内の状態を正確に把握し、適切な治療を行うことが非常に難しくなります。このため、より詳細な診断と治療のためには全身麻酔が必須となります。
しかし、麻酔にはリスクも伴います。特に高齢の場合や持病があると、麻酔の副作用が問題となることもあります。
そのため、麻酔を使用する前には、犬や猫の健康状態を十分に評価し、リスクとメリットを慎重に検討することが重要です。
少しでも飼い主様や愛犬、愛猫の不安を減らせるように、当院では事前にしっかりとご説明と術前検査を行ったうえで全身麻酔を行っております。
まとめ
愛犬や愛猫の口腔内健康を保つためには、家庭での日常的な歯磨きに加えて、定期的なスケーリングが欠かせません。
1歳を過ぎたら少なくとも半年に1回(理想は3ヶ月に1回)歯科検診を受けるようにしましょう。
犬や猫の口臭は必ずしも歯石の蓄積だけによるものではありません。口内炎や歯周病など、他の口腔内疾患も口臭を引き起こす原因となり得ます。
これらの病気を放置すると健康状態に深刻な影響を及ぼすことがあるため、愛犬や愛猫の口臭が気になる場合は、早めに獣医師に相談し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
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