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愛犬がうんちを食べてしまうのはなぜ?|犬の“食糞”に悩んだら

倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。

岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。

 

動物病院でよく寄せられるお悩みのひとつに、「愛犬がうんちを食べてしまう」という“食糞(しょくふん)”のご相談があります。

このような行動に困っている飼い主様は少なくなく、「恥ずかしくて誰にも言えない」「しつけがうまくいっていないと思われたらどうしよう…」と感じている方もいらっしゃいます。

しかし、実はこの“食糞”という行動は、決して珍しいことではありません。

 

子犬に多いと思われがちですが、実際には成犬やシニアの犬にも見られることがあり、その背景にはいくつかの理由が考えられます。

 

今回は、犬がうんちを食べてしまう主な理由や、飼い主様がすぐに試せる対策方法、そして動物病院でできるサポートについて解説していきます。

■目次
1.なぜ犬は自分のうんちを食べてしまうの?
2.まず試してみたい、基本的な対策
3.それでも改善しないときは?
4.まとめ

 

なぜ犬は自分のうんちを食べてしまうの?


愛犬が自分のうんちを口にしてしまう…そんな様子を目にして、「どうしてこんなことを?」と驚かれる飼い主様も多いのではないでしょうか。

 

一見、人間の感覚では「汚い」「異常なのでは?」と思ってしまうこの行動。

しかし、犬にとってはまったく違う意味を持っていることもあり、決して珍しいことではありません

実際にはうんちを口にしてしまう行動の背景には、いくつもの理由が考えられます。

ここでは、よく見られる主な原因についてご紹介します。

 

退屈やストレスによるもの

長時間の留守番や運動不足などで愛犬が退屈してしまうと、「なんとなく気になって…」という感覚でうんちに興味を持つことがあります。

また、ストレスを感じているとき、その不安をまぎらわせるために同じ行動を繰り返してしまうことも。

 

このように、ストレスを背景にして目的のない行動を続けることを「常同行動(じょうどうこうどう)」と呼びます。退屈や不安が引き金になっていることも多いため、生活環境の見直しが必要になるケースもあります。

 

犬のストレスについてはこちらから

 

飼い主様の反応を引き出したい

「やめて!」と慌てる飼い主様の様子を、犬は“注目された”と感じているかもしれません。

叱っているつもりでも、犬にとっては「自分にかまってくれた!」と受け取られ、逆に行動が強化されてしまうことがあります。

 

犬は「褒められたい」という気持ちと同じくらい、「注目されたい」という気持ちでも動く動物なのです。

 

栄養の吸収不良や消化不良

与えているフードが体に合っていない場合や、消化や吸収がうまくできていない場合、便の中に未消化の成分が残ってしまうことがあります。そのにおいや食感に興味を持ち、うんちを食べてしまうケースもあります。

特に便がやわらかい犬には、このタイプの食糞がよく見られます。

 

栄養管理についてはこちらから

 

本能的な行動の名残

母犬は子犬がまだ自分で排泄できない時期、巣の中を清潔に保つために排泄物をなめ取ることがあります。

この本能的な行動の名残で、大きくなってからも排泄物を口にしてしまう犬もいるのです。

 

子犬期の学習不足

子犬の頃は、一時的にうんちを口にしてしまうことがあります。

通常であれば成長とともに自然とおさまっていく行動ですが、その時期に適切な対応がされなかった場合、習慣として残ってしまうこともあります。

 

このように、食糞の原因は一つだけではなく、いくつかの要因が重なっていることも少なくありません。

「何度叱ってもやめない…」と感じるときは、その裏にある気持ちや体のサインに気づいてあげることが大切です。

 

まず試してみたい、基本的な対策


食糞に悩んでいる飼い主様が、まずご家庭で取り組めることはたくさんあります。

ここでは、日常の中で実践しやすい基本的な対策をいくつかご紹介します。

 

排便後はすぐに片付ける

もっともシンプルで効果的なのが、うんちをすぐに片付けることです。

愛犬が排便したあと、なるべく早く片付けることで、“食べてしまうきっかけ”そのものを減らすことができます。

 

食糞しなかったらご褒美を

排便後にうんちへ近づかず、そのままスムーズに離れたときは、すかさず「よくできたね!」と声をかけて、おやつなどのご褒美をあげましょう。

「うんちを食べなかった=いいことがあった!」という印象をつけることで、少しずつ行動の改善につながっていきます。

 

ストレス発散の機会を増やす

退屈やストレスが原因になっている場合もあるため、お散歩の時間を少し増やしたり、知育トイなどで遊ぶ時間を取り入れたりすることも効果的です。

 

フードの見直し

体に合っていないフードや消化しにくい食事が原因で、便に未消化の成分が含まれてしまうことがあります。

そういった場合は、消化にやさしいフードに切り替え、腸内環境を整えるサプリメントを取り入れるのも一つの方法です。

 

腸活についてはこちらから

 

生活環境の工夫

トイレと食事スペースの距離が近いと、うんちに興味を持ちやすくなることがあります。

そのため、トイレと食事の場所はしっかり分けて配置するのがおすすめです。

犬の食糞対策をイラストで紹介した図。排泄後はすぐに片づける、フードの見直し、散歩などでストレスを発散させる、ご褒美で良い行動をほめるといった4つの対策方法が描かれている。

 

それでも改善しないときは?


ここまでご紹介したような対策を試しても、なかなか食糞行動が改善しない場合は、もしかしたら目に見えていない原因が隠れている可能性も考えられます。

 

たとえば、消化器の不調や体内寄生虫の感染、さらに「膵外分泌不全(すいがいぶんぴつふぜん)」という、膵臓から分泌される消化酵素が不足する病気など、体の内側で起きている異常が影響しているケースもあります。

こうした病気は、見た目では判断が難しく、ご家庭での対処だけでは解決できないことも少なくありません。

 

また、ストレスや行動学的な要因が関係していることもあり、原因がいくつか重なっている場合は一つひとつ丁寧に取り除いていかないと改善が見られにくいこともあります。

気になることがあれば、早めに動物病院に相談してみましょう。

 

まとめ


犬の食糞行動は、決して珍しいことではありません。

しつけの失敗と決めつけるのではなく、まずは原因を探りながら、少しずつ対策を試していくことが大切です。

 

食糞は、退屈やストレス、消化や栄養の問題など、さまざまな要因が関係していることがあります。

排便後にすぐ片付ける、ご褒美を活用する、食事や生活環境を見直すなど、日々のちょっとした工夫が改善につながることもあります。

それでもなかなか変化が見られないときは、迷わず動物病院にご相談ください。

 

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