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犬の会陰ヘルニアについて|お尻に膨らみが現れたら要注意

倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。
岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。

 

会陰ヘルニアは肛門周辺(会陰部)の筋肉に小さな隙間(ヘルニア孔)ができ、そこから腸などの臓器が飛び出してしまう病気です。
この病気は主に中高齢の未去勢のオス犬に見られ、メス犬や猫での発生はほとんど報告されていません。
男性ホルモンが会陰ヘルニアの発生に影響を与えている可能性があるため、若いうちの去勢手術が予防に効果的であると考えられます。

 

今回は犬の会陰ヘルニアについて、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

 

原因


会陰ヘルニアの発生原因については完全には解明されていませんが、多くの症例が中高齢で去勢されていないオス犬に見られることから、男性ホルモンが何らかの形で関与していると考えられます。

 

また、腹部から会陰部にかけて内部の圧力が増すような病気例えば腫瘍、前立腺肥大、便秘などもヘルニアの発生に関わっている可能性があります。
甲状腺機能低下症や自然な老化による筋肉の衰えも、会陰部の筋肉が薄くなり、強い圧力がかかった時に裂けやすくなる要因となり得ます。

 

特に発生が多い犬種としては、ミニチュア・ダックスフンド、ウェルシュコーギー、ボストンテリア、ポメラニアンなどが挙げられますが、これは未去勢のオス犬に限らず、どの犬種でも起こり得る病気です。

 

症状


会陰ヘルニアの最も一般的な症状は排便の困難です。
ヘルニア直腸を圧迫すると、便の通過が難しくなり、便秘や排便時の痛みを引き起こすことがあります。この痛みが原因で、犬が排便を嫌がる場合もあります。

 

さらに、ヘルニア孔からは膀胱や尿道、前立腺が飛び出すこともあり、これが原因で排尿困難を引き起こすことがあります。また、腸が飛び出した場合は腸閉塞などの重篤な状態に至ることもあり、これらは緊急手術を必要とすることもあります。

 

肛門周辺にはブヨブヨとした膨らみが見られることも特徴的です。この膨らみは片側だけに限らず、場合によっては両側に見られることもあります。初期には小さいため気付きにくいですが、時間が経つにつれて徐々に大きくなります。

 

診断方法


会陰ヘルニアは主に肛門周囲の触診と直腸検査によって診断されます。
直腸検査では、肛門に指を挿入して直腸の内側を触診し、ヘルニア孔の存在や状態を確認します。これにより、ヘルニアがどの程度進行しているか、また、ヘルニア孔から飛び出ている臓器があるかどうかを確認します。

 

さらに詳しい診断を行うために、レントゲン検査や超音波検査が推奨されます。これらの画像診断によって、ヘルニア孔から出ている臓器の特定や、他の疾患が併発していないかを確認できます。特に超音波検査は、臓器の詳細な状態を視覚的に把握するのに非常に有効です。

 

治療方法


会陰ヘルニアの治療において、基本となるのは外科手術です。ヘルニア孔は時間とともに拡大するものの自然に閉じることはないため、ヘルニア孔から飛び出た臓器を元の正常な位置に戻します。
特に未去勢のオス犬では再発のリスクが高いため、ヘルニアの手術と同時に去勢手術を行うことが推奨されます。

 

会陰ヘルニアの治療は術後のケアも重要です。
手術直後は痛みがあり、術後の違和感から排便時も強くいきめない場合があるため、便が出やすくなるよう、便の滑りを良くし、便がやわらかくなるよう食事療法を行い、ときには内服薬を使用することもあります。

 

また、慢性便秘により結腸が拡張してしまっている場合、手術後も慢性的な便秘が残ることがあり、長期にわたる食事療法や内科的治療が必要です。

 

予防法やご家庭での注意点


この病気は精巣から分泌される男性ホルモンの影響が大きいと考えられているため、若いうちに去勢手術を行うことがこの病気の予防になります。

去勢手術についてはこちらで解説しています

 

また、会陰ヘルニアは放置すると慢性の便秘などの後遺症を残すリスクがあります。一度ヘルニアが形成されると、排便時の困難や痛みが常態化することがあり、これが慢性便秘へとつながることもあります。そのため、早期の発見と治療が非常に重要です。

 

まとめ


会陰ヘルニアは適切な治療と予防によって、リスクを大きく減らすことが可能です。愛犬の健康を守るためにも、症状に気付いたらすぐに獣医師の診断を受けることが大切です。
何か気になる症状があればお早めに当院にご相談ください。

 

岡山県倉敷市にある「倉敷動物愛護病院」
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