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猫免疫不全ウイルス感染症について|猫エイズってなに?愛猫を守るための知識

倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。

岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。

 

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)は、猫の免疫力が徐々に低下してしまう病気です。

発症までの潜伏期間はさまざまで、発症せずに一生を終える猫もいれば、重篤な免疫不全状態に陥ってすぐに命を落としてしまう猫もいます。

この病気の怖いところは有効な治療法がないことであり、症状に対する治療を都度行う以外にできることがありません。そのため、予防が非常に重要となります。

 

今回は猫免疫不全ウイルス感染症について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。

■目次
1.猫免疫不全ウイルス感染症とは
2.症状
3.原因
4.診断方法
5.治療方法
6.予防法やご家庭での注意点
7.まとめ

 

猫免疫不全ウイルス感染症とは


猫の免疫不全ウイルス感染症は「猫エイズ」とも呼ばれ、ウイルスへの感染により免疫力が徐々に低下してしまう病気です。

感染後すぐに発症するわけではなく、無症状の期間(潜伏期間)を経て発症します。

 

症状


猫免疫不全ウイルス感染症には、感染から発症まで無症状の潜伏期間があります。

この潜伏期間の長さは猫によってさまざまで、数ヶ月から数年、時には発症せずに一生を終えることもあります。

 

感染直後には、一時的にリンパ節の腫れや発熱、元気がないなどの症状が見られることがありますが、次第に治まり、無症状の潜伏期間に入ります。

この期間中、首もとや足の付け根、膝の裏など全身のリンパ節が腫れることがありますが、他に症状が見られないため気づかれにくいです。

 

しかし、免疫機能が低下してくると、リンパ節の腫れに加えて、口内炎や風邪のような症状、下痢、皮膚病などが現れます。

特に口内炎はよく見られる症状で、痛みから食欲が減ったり、よだれが増えたり、口の臭いが臭くなることがあります。

 

そして、末期になると免疫不全状態に陥り、食欲が減り、痩せて貧血を起こし、さまざまな感染症に罹りやすくなります。

また、悪性リンパ腫などの悪性腫瘍の発生リスクも高まります

通常であれば自分の免疫力で排除できる細菌やウイルスに対抗できず、肺炎や多臓器不全を引き起こして命を落とすことがあります。

 

原因


ウイルスへの主な感染経路は、感染猫との喧嘩で噛まれた際にウイルスを多く含む唾液が体内に入ることです。

これ以外にも、母猫が感染している場合にお腹の中の子猫に感染するケースや、交尾の際に感染するケースも考えられますが、感染する確率はあまり高くありません。そのため、喧嘩による咬傷が最も感染確率の高い主な感染経路とされています。

 

また、このウイルスは空気感染や接触感染はしないので、同じ家で同居しているだけでは他の猫に感染することはありません。

 

診断方法


猫免疫不全ウイルス感染症は、血液検査で抗体の有無を調べることで診断できます。

抗体を調べるための簡易キットがあり、採血から5分程度で結果を知ることができます。

 

ただし、ウイルスに感染してから抗体ができるまでには1〜2ヶ月かかるため、感染直後に検査を行っても、感染していたとしても結果が陰性になることがあります。

そのため、脱走して怪我をして帰ってきたなど、感染のリスクがある場合には、感染が疑われる出来事から2ヶ月後くらいに検査をすることをおすすめします。

 

また、母猫が感染していた場合、生まれた子猫が母猫の抗体を引き継いでいることがあり、感染していないのに陽性反応が出ることがあります。

子猫の場合は生後半年以降で検査を行うと正確な結果が得られやすいでしょう。

 

治療方法


猫免疫不全ウイルス感染症には有効な治療法がないため、症状を和らげるために、鎮痛薬や輸液療法などで対症療法を行います。

 

また、細菌やウイルスへの抵抗力が著しく低下するため、抗菌剤や抗ウイルス薬などを使用することもあります。

 

予防法やご家庭での注意点


ウイルスの感染は、ほとんどが感染猫からの咬傷によるものなので、感染猫との接触を避けることが最も効果的な予防策です。

特に野良猫は、猫免疫不全ウイルスや猫白血病ウイルスに感染している割合が高いため、猫を飼う際には基本的に外に出さずに完全室内飼いにするようにしましょう。

 

また、新しく猫を迎える際には、同居猫との接触前に抗体検査を行い、感染していないかを確認しましょう。

仮に感染していたとしても、同じ空間にいるだけで感染することはありませんが、唾液に接触することで同居猫に感染が広がる恐れがあります。そのため、感染猫は同居猫と別室で暮らし、食器や水入れ、トイレなどは完全に分けるようにしてください。

 

さらに、猫免疫不全ウイルスに対しては、ワクチンも販売されています。

最も安心なのは完全室内飼いですが、どうしても外に出る場合にはワクチンの接種をおすすめします。

 

まとめ


完全室内飼いの猫が増えたことで、この病気自体は減少傾向にありますが、依然として感染している野良猫は多く存在します。そのため、猫を飼う際には、原則として外には出さないように注意してください。外に出ることで感染のリスクが高まるため、愛猫の健康を守るためにも、完全室内飼いを心がけましょう。

 

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