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猫白血病ウイルス感染症(FelV)について|ワクチンで予防できる?

倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。

岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。

 

猫白血病ウイルスは、感染猫(主に野良猫)との接触で感染し、猫に白血病などさまざまな病気を引き起こします。

「白血病」と聞くと不安に感じる飼い主様もいらっしゃるかもしれませんが、感染したとしてもウイルスを完全に体から排除できるケースもありますし、持続感染したからといってすぐに命を落とすわけではありません。

 

今回は猫白血病ウイルス感染症について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。

■目次
1.猫白血病とは
2.症状
3.原因
4.診断方法
5.治療方法
6.予防法やご家庭での注意点
7.まとめ

 

猫白血病とは


猫白血病ウイルス感染症は、猫白血病ウイルスに感染することで、白血病やリンパ腫などの血液のがんを引き起こす可能性があります。これに加えて、貧血や免疫力の低下、腎炎、流産、口内炎、下痢など、さまざまな病気の原因にもなることが知られています。

 

ウイルスに感染した後、体から完全に排除できずに持続感染状態(体内にウイルスが居続ける状態)になると、3〜4年以内に亡くなってしまうことが多いですが、健康状態や免疫力次第ではウイルスに打ち勝ち、体から完全に排除することができる猫もいます。

 

特に、感染した年齢がその後の経過に大きく影響します。

子猫の場合、持続感染により亡くなってしまうことが多いですが、離乳期を過ぎると持続感染になる確率は約半分に減少し、1歳以上では持続感染になる猫は約10%ほどに減ります。すべての感染猫が命を落とすわけではありません。

 

また、ウイルスは感染猫の唾液に多く含まれており、噛まれたり、舐め合ったり、食器やトイレを共有することで感染が広がります。

なお、人間の白血病とは違うため、猫の白血病ウイルスが人間にうつることはありません。

 

症状


猫白血病ウイルスに感染すると、感染から2〜6週間でリンパ節の腫れや発熱が見られます。

症状の重さは猫により異なりますが、この時期の症状が重いほど持続感染になりやすいと言われています。

 

ウイルスに打ち勝てば、これらの症状は消えていきますが、持続感染状態になると、リンパ腫や白血病などの血液のがん、さらには貧血や流産などが起こることがあります。

また、免疫力が低下することで、治りにくい口内炎ができたり、さまざまな感染症にかかりやすくなったりすることもあります。

 

さらに、貧血が進むと、通常ピンク色の歯茎や耳の内側が白っぽく変わることがあります。

口内炎がある場合は、痛みで食欲が落ちる、口の中の臭いが強くなる、よだれが増えるなどの症状も現れます。

 

原因


猫白血病ウイルスは、特に野良猫でのウイルス保有率が高いため、野良猫から感染するケースが多く見られます。

猫免疫不全ウイルスと同様に、感染猫の唾液に多くのウイルスが含まれていますが、猫白血病ウイルスは猫免疫不全ウイルスとは異なり、噛まれるだけでなく、舐め合ったり、食器やトイレを共有したりするだけでも感染が広がります。

 

猫免疫不全ウイルス感染症についてはこちらで解説しています

 

また、妊娠中の母猫が胎子にウイルスを感染させてしまうこともあります。この場合、感染した胎子は流産するか、死産することが多く、たとえ生まれても早期に亡くなってしまうことが一般的です。

 

診断方法


猫白血病は、血液検査でウイルスの抗原を検出することで診断できます。抗原を検出するための簡易キットが市販されており、採血から約5分で結果を確認することが可能です。

 

ただし、ウイルスに感染しても検出されない場合があり、特に感染直後は結果が陰性になる可能性があります。そのため、感染のリスクがある状況が発生した場合は、感染から約4週間後に再検査を受けることが推奨されます。

 

また、感染後に発熱などの症状が見られる際に血液検査を行うと、白血球や血小板の減少、貧血などの異常が確認されることがあります。

 

さらに、初回のウイルス抗体検査で陽性になった場合でも、その後ウイルスを体から排除できれば陰性に変わることがあります。このため、3〜4ヶ月後に再検査を行うことが一般的です。

再検査で陰性になればウイルスを排除できたことを意味しますが、もし再度陽性であれば、その猫は持続感染となってしまったと考えられます。

 

治療方法


感染初期の症状に対しては、インターフェロンを投与します。

インターフェロンは、抗ウイルス作用と免疫を高める効果があり、持続感染になるリスクを低減できる可能性があります。

ただし、成猫の場合、インターフェロンを使用しなくても自然にウイルスを排除することがあるため、インターフェロンの効果が絶対的なものとは言い切れません。

 

一方で、持続感染状態を根本的に治す治療法は現時点では存在しません。そのため、落ちた免疫力を補うために、インターフェロンの点眼や注射による治療を行い、さらに細菌感染を予防するために抗菌剤を投与します。

そして、症状に応じて、抗炎症剤や鎮痛剤などを用いた対症療法が行われます。

 

予防法やご家庭での注意点


猫白血病ウイルスの予防には、感染している猫と接触させないことが最も効果的です。

猫白血病は特に野良猫に多い病気ですので、愛猫を完全に室内で飼い、外に出さずに野良猫との接触を避けることが大切です。

また、同居猫同士でも舐め合いや喧嘩、さらには食器やトイレの共有を通じて感染が広がる可能性があります。

 

新しく猫をお迎えする際には、まず抗体検査を行い、猫白血病ウイルスに感染していないことを確認しましょう。検査結果が出るまでは、先住猫とは別の部屋で過ごさせ、食器やトイレも完全に分けてください。検査で陰性が確認できれば、同じお部屋で過ごしても問題ありませんが、陽性の場合は、そのまま別々に暮らすことが必要です。

 

また、猫白血病ウイルスはワクチンで予防できます

基本的には完全室内飼いが最も安全ですが、もし外に出る機会がある場合や、新しく迎えた猫がウイルスを持っている可能性がある場合は、定期的なワクチン接種で予防を心がけましょう。

さらに、先住猫がウイルスに持続感染している場合、新しく迎える猫にはワクチン接種をしておくと、より安心です。もちろん、別々の部屋で、食器やトイレを分けることも忘れずに行いましょう。

 

持続感染している猫は、ストレスを受けると症状が現れやすくなるため、飼育環境や栄養管理に注意して、できるだけストレスをかけないようにしてあげてください。また、症状が出た際に早期に対応できるよう、定期的に動物病院で健康チェックを受け、適切なケアを行うことが大切です。

 

まとめ


「白血病」と聞くと、すぐに命を落としてしまうイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、猫白血病ウイルスは猫の年齢や健康状態によっては、完全に打ち勝つことができる場合もあります。また、たとえ持続感染になってしまったとしても、正しい知識を持ち、適切に対応することで、穏やかな予後を過ごすことができるかもしれません。

 

とはいえ、何よりも予防が最も重要です。愛猫を家の外に出さないようにし、新しい猫を迎える際には必ず抗体検査を行ってください。そして、もし検査で陽性が確認された場合は、先住猫とは接触させないように注意することが大切です。

 

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