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獣医師コラム
犬と猫の皮膚炎|発生部位別で原因を特定!症状改善への近道
倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。
岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。
犬と猫の皮膚トラブルは日常的に遭遇する一般的な疾患であり、動物病院での診療件数が特に多いカテゴリーの一つです。
皮膚病は、その原因が外部のアレルゲンから内部の疾患まで非常に多様であり、症状も痒み、赤み、脱毛など多岐にわたるため、一つ一つの症状を正確に診断し、それに合った適切な治療を行うことが極めて重要です。
この記事では、犬と猫における皮膚炎の原因、好発部位、診断方法、治療方法、そしてご家庭での注意点について詳しく掘り下げていきます。
■目次
1.犬や猫に多い皮膚炎
2.皮膚炎の好発部位とその特徴
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
犬や猫に多い皮膚炎
犬や猫が抱える皮膚炎は、さまざまな原因によって引き起こされるため、症状や治療法も多岐にわたります。それぞれのタイプを理解し、適切な対処をすることが重要です。
<アトピー性皮膚炎>
原因:遺伝的な要素、環境因子(花粉、ハウスダスト、ダニなど)、皮膚のバリア機能の低下、皮膚の細菌叢(皮膚に存在する微生物群)の変化など。
症状:痒み、発赤、脱毛。
治療:アレルゲン回避、薬物療法、スキンケア。
<膿皮症>
原因:細菌感染による皮膚病を総称して膿皮症と呼びます。皮膚のバリア機能の低下や免疫力の低下により、皮膚の常在菌が増殖することで感染を引き起こします。
症状:痒み、皮膚の赤み。
治療:抗菌薬による治療、スキンケア。
<マラセチア性皮膚炎>
原因:マラセチアと呼ばれる真菌(カビ)による感染症です。湿気が多い環境や脂漏症が原因で発症します。
症状:外耳炎の併発など。
治療:抗真菌薬による治療、環境の管理。
<皮膚糸状菌症(白癬)>
原因:感染している動物から他の動物への感染や生活環境中に存在している菌から感染します。
症状:免疫が弱い子犬や子猫に多く見られる。
治療:抗真菌薬による治療。
<脂漏性皮膚炎>
原因:皮脂の過剰分泌や不十分な分泌が原因です。
症状:フケ、皮膚の乾燥、臭いの発生。
治療:適切なシャンプーやスキンケア。
<ホルモン性疾患>
原因:副腎皮質ホルモン、甲状腺のホルモン、性ホルモントラブルで毛周期に異常が生じます。
症状:痒みが少なく、脱毛が左右対称に起こる。
治療:基礎疾患の治療。
<寄生虫による皮膚炎>
原因:ノミ、マダニ、シラミなどの寄生虫が原因です。
症状:強い痒み、皮膚の赤み、脱毛。
治療:寄生虫駆除薬の使用、環境管理。
皮膚炎の好発部位とその特徴
犬や猫の皮膚炎は、特定の部位によく現れる特徴があります。これらの好発部位とその特徴を理解することは、正確な診断へと繋がります。
<耳>
耳の皮膚炎は外耳炎も含まれており、主に耳ダニやアレルギーによって引き起こされることがあります。この状態で一般的に見られる症状には、耳を振ったり、頭を傾けたりする動作、耳の内側の赤み、異常な臭いが発生することなどがあります。
<顔と首>
顔や首に見られる皮膚炎は、主にアレルギー反応やノミの寄生によって引き起こされます。症状としては、強い痒み、赤み、脱毛、皮膚の腫れなどが挙げられます。
これらの部位は、自らの爪で掻きむしってしまうことで、症状がさらに悪化する可能性があるため注意が必要です。
<足と足首>
足や足首は地面や草などの外部刺激物に直接触れる機会が多い部位であるため、皮膚炎が引き起こされることがあります。
足を舐めたり噛んだりする行動は、このタイプの皮膚炎が原因であることがよくあります。
<腹部>
腹部の皮膚炎は、接触アレルギーや寄生虫の影響によって生じることがあります。皮膚が薄く敏感なため、赤みや痒み、発疹が生じやすい部位です。
<背中と脇の下>
背中と脇の下で見られる皮膚炎は、特に脂漏性皮膚炎や細菌感染によって引き起こされることがあります。これらの部位は、脂肪分の多い皮膚が特徴で、フケや脱毛、悪臭が発生しやすい傾向にあります
診断方法
犬や猫の皮膚炎の正確な診断は、適切な治療法を選択し、症状の改善を図る上で非常に重要です。診断には以下の方法が一般的に用いられます。
<皮膚掻爬検査(スクレイピング検査)>
皮膚の表面を擦り取り、顕微鏡で観察して毛穴の深くに寄生する毛包虫などを検出します。この検査は寄生虫を発見するのに非常に効果的ですが、皮膚を強く擦る必要があるため、少量の出血が伴うことがあります。
<真菌培養>
皮膚から採取したサンプルを特定の培地に置いて、真菌(カビ)の種類を特定します。リングワーム(白癬)の診断に特に有用です。
<ウッド灯検査>
ウッド灯(特殊な紫外線ライト)を用いて病変部を照らし、皮膚糸状菌症の有無を確認します。皮膚糸状菌は30~50%の確率で青りんご色に光りますが、蛍光を発しない場合もあります。
<皮膚生検>
皮膚の小片を採取し、組織学的に検査します。これにより、がんや慢性的な皮膚疾患の原因を特定できます。
<血液検査>
アレルギーやホルモン異常、その他内分泌疾患が皮膚病の原因でないかを調べます。
<アレルギーテスト>
食物アレルギーや環境アレルギー(ハウスダストや花粉など)の特定を目的とし、血液検査や皮膚への直接塗布による反応を確認します。
<細菌培養と感受性検査>
皮膚から採取した細菌を培養し、どの抗生物質が効果的であるかを確認します。これにより、治療に最適な抗生物質を選択できます。
これらの検査によって、皮膚病の原因を特定し、最も効果的な治療法を決定することが可能です。症状や病歴に応じて、検査を組み合わせて行うことが多くあります。
治療方法
治療方法は、その原因となっている病気によって大きく異なります。
診断結果が細菌や真菌による感染症を示している場合、抗生物質や抗真菌薬を塗布する局所治療が行われることがあります。
薬用シャンプーの使用も、脂漏症、真菌感染症、寄生虫の問題への対処に役立ちます。
皮膚の炎症や痒みを抑えるためには、ステロイドや非ステロイド性抗炎症薬が使用される場合があり、アレルギーによる皮膚症状を抑制するためにアレルギー治療薬が処方されることもあります。
食物アレルギーが疑われる場合は、特定の成分を除去した特別な食事への切り替えが症状改善に繋がります。
環境因子によるアレルギーの場合、環境管理を徹底することが重要です。
なお、アレルゲン特異的免疫療法(免疫療法)により、特定のアレルゲンに対する耐性を高める治療が行われることがあります。
予防法やご家庭での注意点
皮膚炎が疑われる場合には、適切な初期対応が症状の進行を防ぐ上で非常に重要です。特に、皮膚炎がよく発生する部位を定期的に確認し、異常が見られたら早めに獣医師に相談することが大切です。
自宅でできるケアとしては、皮膚を清潔に保つために定期的なシャンプーやブラッシングが有効です。
しかし、過度なシャンプーは皮膚の保護層となる自然な油分を取り除き、かえって皮膚炎を悪化させる可能性があるため、使用するシャンプーの種類や頻度には注意が必要です。
まとめ
犬や猫の皮膚炎は、さまざまな原因によって引き起こされるため、正確な診断と適切な治療が不可欠です。皮膚炎がよく発生する部位を定期的にチェックし、早期に異常を発見することで、より深刻な問題の発生を防げます。
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