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愛犬・愛猫の歯周病を防ぐ!|歯石ケアと家庭でできる予防法

倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。

岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。

 

実は、犬や猫は私たちと同じように歯周病にかかりやすい動物です。歯周病は単なるお口のトラブルにとどまらず、腸内環境を悪化させて免疫力を低下させ、さらに心臓病の原因になるリスクもあります。

 

歯周病が進行すると、犬や猫の場合、全身麻酔をかけての治療が必要になります。ただし、高齢になると麻酔によるリスクが増し、治療が難しくなることもあります。

だからこそ、若いうちから自宅でのデンタルケアを習慣にし、定期的な歯科検診や、状態に応じた動物病院での適切な処置が大切です。そうすることで愛犬や愛猫の老後も健康な歯を残してあげることもできます。

 

今回は当院でも多くの方が悩みとして持っている犬と猫の歯周病について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。

■目次
1.歯周病とは
2.症状
3.原因
4.診断方法
5.治療方法
6.予防法やご家庭での注意点
7.まとめ

 

歯周病とは


歯周病は、歯周病菌によって歯肉の腫れや、歯を支える組織が破壊されてしまう病気です。

進行すると、歯がぐらつき、鼻の穴との隔壁が壊されたり、下顎の骨が折れたりすることもあります。

また、歯周病は歯だけでなく、心臓病や腎臓病、鼻炎、老化の促進にも関連していることがわかっています。

 

歯周病菌は歯肉から血液に入り、全身を巡ります。通常、免疫の働きでこれらの細菌は体内で殺菌されますが、細菌が死んでもその毒素は残り、体に悪影響を与えることがあります。

特に、基礎疾患を持っている場合や、免疫力が低下している高齢の犬や猫では、血液中の歯周病菌が処理されず、敗血症を引き起こし、ショック状態に陥ることもあります。最悪の場合、命に関わることもあるため、注意が必要です。

 

また最近の調査では、腸内に歯周病関連の細菌がいる場合、胃腸炎や慢性腎不全、腫瘍などの病気にかかりやすいという結果も出ています。

腸には多くの免疫細胞が存在するため、歯周病菌やその毒素が腸内環境を乱すことで、全身の免疫力が低下するリスクも考えられます。

 

症状


犬や猫の歯周病の代表的な症状には、以下のものがあります。

 

口から腐敗臭がする

歯石が付いている

歯肉が腫れている

歯肉から血が出ている

歯がぐらぐらしている

食欲がない

食べこぼしが増える

食事中や水を飲む際にくしゃみや鼻水が出る(鼻と口を隔てる壁が壊れているため)

 

犬や猫の歯石は、黄色や茶色、灰色をしており、歯肉の付近から付き始め、次第に広がって歯全体を覆うようになります。

また、歯周病が進行すると、歯根膿瘍(歯の根元に膿が溜まる状態)を引き起こし、顔の一部が腫れることもあります。

 

原因


歯周病は歯周病菌によって引き起こされますが、その歯周病菌が増える原因として歯石があります。犬や猫は人間と比べて歯石ができるスピードが速く、たった3日ほどで歯垢が歯石に変化します。

 

歯垢は食べかすに付着した歯周病菌が増殖したもので、歯石はその歯垢にカルシウムなどのミネラルが付いて硬くなったものです。歯石の表面はザラザラしているため、歯垢が付きやすくなり、さらに歯石が蓄積していきます。

 

歯垢は歯磨きで取り除くことができますが、一度歯石になると超音波スケーリングでしか除去できません

歯石に守られた歯周病菌はどんどん増殖し、歯肉に感染して歯周病を引き起こします。

 

診断方法


口臭がある場合、まず診察でにおいを確認し、その後、口の中を観察して歯石の付着具合や歯茎の状態を確認します。

また、歯の根元や歯を支える組織の状態を詳しく調べるために、歯科レントゲン検査を行います。

 

歯周病が進行すると、歯周ポケットが深くなるため、可能であればプローブという器具を使ってその深さを測り、細菌検査を行うこともあります。

 

治療方法


歯石の除去には、全身麻酔をかけたうえで超音波スケーリングを行い、必要に応じて抜歯をします。

飼い主様の中には、歯がなくなると食事ができなくなるのではと心配される方もいらっしゃいますが、犬や猫はもともと食べ物をあまり噛まずに飲み込むため、歯がなくても食べられないわけではありません。

むしろ、痛みを感じる歯がなくなることで、食欲が戻るケースが多く見られます。

スケーリングについてはこちらで解説しています

 

予防法やご家庭での注意点


歯周病の予防には、ご家庭での歯磨きが非常に効果的です。

一度付いてしまった歯石は超音波スケーリングでしか取れませんが、歯垢の段階であれば歯磨きで除去することが可能です。

犬も猫も、3日ほどで歯垢が歯石に変わってしまうため、できる限り毎日歯磨きを行うことをおすすめします。

 

高齢になると麻酔のリスクが高まり、麻酔をかけての超音波スケーリングが難しくなることもあります。

若いうちに歯磨きを習慣化することで、高齢になってからも自分の歯を残せるようにしてあげましょう。

 

さらに、定期的な歯科検診も大切です。

ご家庭での歯磨きだけでは完全に歯石の予防は難しいため、定期的に動物病院で獣医師によるチェックを受け、必要に応じて超音波スケーリングを行うことが重要です。

 

まとめ


歯周病は歯の病気というイメージが強いですが、放置すると菌が全身に広がり、敗血症を引き起こしたり、腸の免疫に悪影響を与えたりするリスクがある、非常に怖い病気です。

予防には歯磨きがとても効果的ですので、無理なく少しずつ、ご家庭で歯磨きを習慣化していきましょう。

 

歯磨きの方法や使用する道具について気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

 

■歯周病に関連する記事はこちらで解説しています

猫の口内炎について|猫がご飯を食べない?口内炎かも

猫の腎臓病について|猫に多い病気の1つ

犬と猫の食欲不振|ご飯を食べない理由や対処法は?

 

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<参考>

https://mainichi.jp/articles/20240821/k00/00m/040/141000c