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犬と猫のアレルギー性皮膚炎について|皮膚トラブルの原因は?

倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。
岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。

花粉、ハウスダスト、動物の毛など、人間にアレルギーを引き起こすさまざまな物質がありますが、実際には動物もこれらの物質によってアレルギー反応を示すことがあります。
特にこのアレルギー反応は皮膚に現れやすく、「アレルギー性皮膚炎」と呼ばれています

今回は、犬と猫のアレルギー性皮膚炎について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。

 

■目次
1.アレルギー性皮膚炎とは何か
2.主なアレルギーの種類と原因
3.症状
4.診断方法
5.治療方法
6.予防法やご家庭での注意点
7.まとめ

 

アレルギー性皮膚炎とは何か


アレルギー性皮膚炎は、花粉、ダニ、食品成分、家のホコリやカビなどのアレルゲンに対して反応して起こる皮膚の炎症です。
これらのアレルゲンにさらされると、免疫システムがそれを危険と認識して過剰に反応してしまい、炎症やかゆみへと繋がります

 

主なアレルギーの種類と原因


アレルギー性皮膚炎は、アレルゲンによるアレルギー反応が引き起こす皮膚の炎症を指します。
この疾患は原因となるアレルゲンの種類によって、下記の内容に分かれます。

アトピー性皮膚炎>
環境中に存在するアレルゲン(花粉、ハウスダスト、ダニなど)を吸入したり、皮膚を通じて取り込んだりすることで発症します。

 

<食物アレルギー>
食物の中に含まれる特定の成分に対するアレルギー反応が原因で起こります。

 

<ノミアレルギー性皮膚炎(FAD)>
ノミに咬まれた際、ノミの唾液に含まれるタンパク質に対する過敏反応が発生します。

 

<接触性アレルギー皮膚炎
特定のものに触れることによってアレルギー反応が引き起こされ、原因となる物質は免疫系が何に反応するかによって変わってきます。
具体的には、シャンプーや洗剤などの薬物、花粉や植物、プラスチック製の食器・おもちゃ、首輪、カーペットなどがアレルゲンとして接触することにより症状が出ます。
既にアトピー性皮膚炎を発症していると、接触性アレルギーを発症しやすいといわれています。

アレルギー体質の発生には、遺伝的な要素や生後間もない時期の環境など、複数の要因が絡み合っていると考えられていますが、これらの詳細なメカニズムは完全には解明されていません。

 

症状


アレルギー性皮膚炎によって引き起こされる症状には、以下のようなものがあります。

慢性的な皮膚のかゆみ:最も一般的な症状で、絶えず掻きむしったり、舐めたりする原因となります。
皮膚に赤みが出る:炎症により、皮膚が赤くなり、敏感になります。
脱毛:慢性的なかゆみと掻きむしりにより、脱毛が生じることがあります。
皮膚の黒ずみや肥厚:長期にわたる炎症により、皮膚が黒ずんだり厚くなったりすることがあります。
くしゃみ、鼻水:アレルギー反応によるもので、特に呼吸器系のアレルギー症状として現れます。
外耳炎:耳道の炎症で、かゆみや痛みを引き起こします。
結膜炎:目の炎症で、赤みや目やにの原因となります。

これらの症状は、皮膚のバリア機能が損なわれることで、さらに他の皮膚疾患(膿皮症やマラセチア性皮膚炎など)を引き起こすリスクを高めます
症状は、目の周り、口の周り、足先、脇、股など、体の特定の部位に現れますが、接触性アレルギー皮膚炎の場合はアレルゲンと直接接触した部位に限定して症状が現れます。

 

診断方法


アレルギー性皮膚炎の診断は複雑で、正確な原因を特定するためにはさまざまな検査が必要になることがあります。
主に以下の検査方法が用いられます。

皮膚掻爬検査(スクレイピング検査)
皮膚の一部を擦り取り(スクレイピング)、毛穴の深くに寄生している可能性のある毛包虫などを検出することを目的としています。採取したサンプルは顕微鏡下で観察され、寄生虫の有無が確認されます。検査中には皮膚を強く擦る必要があるため、少し出血することがありますが、寄生虫の検出には非常に有効な方法です。

 

<除去食試験>
食物アレルギーを特定するために使用される検査です。
この試験では、アレルゲンを含まない特定の食事を与え、症状が改善するかどうかを観察します。症状が改善すればその食事に含まれていない成分が、アレルゲンである可能性が高いと考えられます。

 

<血液検査>
血液中に特定のアレルゲンに対する抗体(特にIgE抗体)が存在するかどうかを調べます。この検査により、どのアレルゲンに反応しているかを特定できます。
また、リンパ球反応検査も含まれることがあり、これはアレルゲンに対する免疫系の反応をより詳細に調べるものです。

 

治療方法


アレルギー性皮膚炎の治療は、アレルゲンを避けること、適切なスキンケア、薬によるかゆみのコントロールが中心となります。
具体的な治療方法はアレルギーの原因によって異なります。

<アトピー性皮膚炎・接触性アレルギー皮膚炎
原因となる物質が特定できれば、その物質との接触を避けることで症状が改善することがあります。抗生剤、ステロイド剤などを使用して症状の管理を行います。さらに、シャンプー療法は皮膚を清潔に保ち、炎症を抑え、かゆみを軽減するために有効です。

 

<食物アレルギー>
食物アレルギーを起こす原因を調べ、原因となる食物アレルゲンを含まないフードに変えることにより症状は改善していきます。おやつや人間の食べ物を与えると症状が再発してしまう可能性もありますので、食事療法を行う際は療法食とお水だけを与えるようにしましょう。

 

<ノミアレルギー皮膚炎>
ノミ駆除薬を投与し、ノミを駆除します。かゆみがひどい場合は、かゆみを抑えるためにステロイド剤を使用することもあります。

 

予防法やご家庭での注意点


ご家庭では、アレルゲンが蓄積しないために定期的な掃除、空気清浄機の使用、そしてノミの駆除などを行うことが効果的です。
バランスの取れた食事で免疫力を高め、専門のスキンケア製品を用いて皮膚の乾燥や刺激を避けることも大切です。

 

まとめ


アレルギー性皮膚炎は、一度発症すると完全に治癒させるのが難しく、犬や猫の生活の質に大きく影響します。
この症状を管理する鍵は、かゆみをどれだけ上手くコントロールできるかにあります。
愛犬や愛猫の皮膚の健康を守るために、できることから積極的に実践しましょう。

 

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