倉敷市、岡山市、総社市、浅口市、玉野市、早島町の皆さんこんにちは。
岡山県倉敷市の倉敷動物愛護病院の院長垣野です。
犬の健康診断では、血液検査をきっかけに肝臓や胆嚢の異常が見つかることがあります。なかでも「胆泥症(たんでいしょう)」や「胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)」は、初期には目立った症状がなく、腹部エコー検査で偶然発見されることも少なくありません。
一方で、胆嚢の状態が悪化すると、胆汁の通り道がふさがったり、胆嚢が破裂したりする可能性もあるため注意が必要です。
今回は、犬の胆泥症と胆嚢粘液嚢腫について、健康診断で見つかるきっかけや検査、治療の考え方を解説します。

■目次
1.胆嚢はどのような働きをする臓器?
2.犬の胆泥症と胆嚢粘液嚢腫の違い
3.健康診断が早期発見のきっかけに
4.症状が出たときは進行していることも
5.治療と経過観察|状態に応じた判断の大切さ
6.まとめ
胆嚢はどのような働きをする臓器?
胆嚢は肝臓の近くにある袋状の臓器で、肝臓でつくられた「胆汁」を一時的にためる役割があります。
胆汁は、食事に含まれる脂肪の消化を助ける液体です。食事をすると胆嚢が収縮し、胆汁が胆管と呼ばれる通り道を通って十二指腸へ排出されます。
この胆汁が胆嚢内に長くとどまったり、胆嚢の動きが低下したりすると、胆嚢内の状態に変化が起こることがあります。その代表的なものが、胆泥症や胆嚢粘液嚢腫です。
犬の胆泥症と胆嚢粘液嚢腫の違い
胆泥症と胆嚢粘液嚢腫は、どちらも胆嚢内の胆汁に変化が起こる病気ですが、状態や治療の考え方は異なります。
<胆泥症とは>
胆泥症とは、胆汁の成分や粘液などが胆嚢内に沈殿し、泥状にたまった状態です。
胆泥の量や性状、胆嚢壁の状態、血液検査の結果などを総合し、経過観察でよいのか、治療が必要なのかを判断します。
また、胆泥の量が増えたり、時間の経過とともに状態が変化したりすることもあるため、定期的な確認が必要になる場合があります。
<胆嚢粘液嚢腫とは>
胆嚢粘液嚢腫は、粘り気の強い胆汁や粘液が胆嚢内に過剰にたまり、ゼリー状に固まっていく病気です。
内容物が増えると胆嚢が膨らみ、胆汁をうまく排出できなくなることがあります。
さらに進行すると、胆管の閉塞や胆嚢壁への血流低下を招き、胆嚢の壊死や破裂、胆汁性腹膜炎につながる可能性があります。胆汁性腹膜炎は、胆汁がおなかの中に漏れて強い炎症を起こす状態で、速やかな治療が必要です。
<胆泥症があると胆嚢粘液嚢腫になる?>
胆泥症と胆嚢粘液嚢腫は同じ病気ではなく、胆泥がある犬のすべてが胆嚢粘液嚢腫になるわけではありません。
ただし、胆汁の停滞はどちらにも関係すると考えられています。胆泥が多い場合や、エコー検査で胆嚢内の変化が見られる場合は、定期的に状態を確認することが大切です。
健康診断が早期発見のきっかけに
胆泥症や胆嚢粘液嚢腫は、初期には元気や食欲に変化が見られないことがあります。そのため、日常生活の中では気づきにくく、健康診断で偶然見つかるケースも少なくありません。
<血液検査で異常の手がかりを確認>
健康診断の血液検査で「肝臓の数値が高い」と指摘された場合は、肝臓や胆嚢に何らかの負担がかかっている可能性があります。
ただし、数値だけで胆泥症や胆嚢粘液嚢腫と診断することはできません。また、胆嚢に異常があっても、血液検査では目立った変化が出ない場合もあります。
そのため、血液検査の結果や年齢、これまでの経過などを踏まえ、必要に応じて腹部エコー検査を行います。
<エコー検査で肝臓や胆嚢の状態を確認>
腹部エコー検査では、血液検査だけでは分からない肝臓や胆嚢の形、内部の状態を画像で確認できます。通常は全身麻酔を必要としません。
検査では、主に次のような点を確認します。
・胆泥の有無や量
・胆嚢の腫れや形の変化
・胆汁の流れに問題がないか
・胆嚢粘液嚢腫を疑う変化がないか
胆泥が見つかっても、すぐに治療が必要とは限りません。必要に応じて定期的に検査し、以前の結果と比較することで、胆嚢の変化を早い段階で捉えやすくなります。
症状がないうちに異常を見つけ、適切な経過観察や治療につなげられることが、健康診断を受ける大きな意味のひとつです。
症状が出たときは進行していることも
胆泥症や胆嚢粘液嚢腫は、状態が進行すると、次のような変化が表れる場合があります。
・食欲や元気がなくなる
・嘔吐や下痢
・おなかを痛がる
・発熱
・目や歯ぐき、皮膚が黄色く見える
・尿の色が濃くなる
・ぐったりする
特に、繰り返し吐く、強い腹痛がある、黄疸が見られる、急にぐったりしたといった場合は、胆管の閉塞や胆嚢の破裂なども考えられます。様子見は避けて、早めに動物病院へご連絡ください。
これらは胆嚢以外の病気でも見られるため、症状だけで原因を判断せず、必要な検査を受けることが大切です。
治療と経過観察|状態に応じた判断の大切さ
胆泥症や胆嚢粘液嚢腫の対応は、症状の有無やエコー検査の所見、血液検査の結果、病気の進行度などによって異なります。
◆ 胆泥が少なく、症状や検査値の異常が見られない場合
すぐに治療を始めず、定期的な血液検査や腹部エコー検査で経過を確認することがあります。
◆ 治療が必要な場合
胆汁の流れを整える薬や肝臓を保護する薬、食事療法などを検討します。ただし、病状によって適した治療は異なるため、自己判断で薬やサプリメントを与えることは避けましょう。
◆ 胆嚢粘液嚢腫が進行している場合
胆管閉塞や胆嚢破裂の危険が高い場合には、胆嚢を摘出する手術を検討します。状態が安定しているうちに治療方針を考えるためにも、定期的な検査が重要です。
まとめ
胆泥症や胆嚢粘液嚢腫は、初期には目立った症状がなく、普段の様子だけでは気づきにくい病気です。そのため、元気なうちに健康診断を受け、血液検査や腹部エコー検査で肝臓・胆嚢の状態を確認することが早期発見につながります。
倉敷動物愛護病院では、血液検査や腹部エコー検査を行い、肝臓や胆嚢の状態を確認しています。健康診断で気になる所見を指摘された場合はもちろん、これまで大きな異常がない場合も、まずはお気軽にご相談ください。
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